――お二人とも、低用量ピル(LEP)を使った経験があるそうですね。

血栓症などの副作用の話ばかりが頭に残って

印南さん 客室乗務員時代、仕事中にナプキンを持ってトイレに頻繁に行っていたら、外国籍の仲間が低用量ピルの話をしてくれたんです。帰国後、さっそく産婦人科に行って、30歳でピルに出会いました。日本の産婦人科では、海外に比べて副作用の説明をやたらと丁寧にしてくれて、「血栓症のリスク」の話が印象に残っています。

南部さん 私は26歳で第一子を出産。産後に生理が再開したら、ますます生理痛が悪化したんです。ある日、強烈なめまいと吐き気で倒れてしまい、運ばれた病院で産婦人科を受診するように言われました。それをきっかけに、産婦人科で低用量ピル(LEP)を処方してもらい、使い始めたんです。

 実は出産前から婦人科には相談していました。医師からは低用量ピルの提案はありましたが、血栓症などの副作用の話ばかりが頭に残っていました。

 今思うと、自分の知識のなさが恥ずかしいのですが、当時は、生理痛という女性の当たり前の現象を薬でコントロールすることを怖く感じ、「妊娠に影響が出たらどうしよう」などと正確な知識がないための誤解からくる不安もありました。

 でも生理痛で会社は休めても、育児はノンストップ。何とかしなければという切羽詰まった状況の中、思い切ってピルを使ってみることにしたのです。

池田先生 診察室で、医師が情報を伝えるときの話し方に反省があります。本当にごめんなさい。医師は薬の副作用、合併症の説明を一生懸命してしまうことがあります。処方した薬で患者さんに何かあったら大変と思ってしまうのです。

 今は、1万人に数人発症するかどうかの低用量ピルの血栓症のリスク※2だけを強調するような説明は、減ってきていると思います。血栓症のリスクはピルの使用より、妊娠中の人の方が高いので「妊婦さんの血栓症リスクより低いです」という説明の仕方もあるのです。

 2008年、それまで避妊薬としての低用量ピル(OC)だけしかなかった状態から、月経困難症の治療薬としての低用量ピル(LEP)が認可されて、健康保険が使えるようになりました。医師が治療薬として説明できるようになったことは大きいと思います。

※2:『OC・LEPガイドライン2020年度版』公益社団法人日本産科婦人科学会/一般社団法人日本女性医学学会

――低用量ピル(LEP)をのむまでは、どんなケアをしていましたか?

鎮痛剤は、「痛くなる前にのむ」のがポイント。禁煙、鍼灸も効果

南部さん 私はカイロをお腹に貼って温め、市販の鎮痛剤をずっとのんでいました。でも、だんだんと効かなくなってしまって。ナプキンと鎮痛剤の合計を考えたら、そこそこ費用がかかっていましたね。

印南さん 私も鎮痛剤と簡易式カイロでした。

池田先生 入浴やカイロなど温めるのはいいですね。ご自分の体ときちんと向き合っていて感心しました。温めると子宮収縮がゆるんで楽になると思います。ところで、おふたりは、病院で鎮痛剤ののみ方の説明を受けましたか?

印南さん南部さん いいえ。

池田先生 鎮痛剤ののみ方は、とても大事です。生理痛は子宮が強く収縮することで痛むのですが、生理痛に効く鎮痛剤には子宮の収縮をブロックする作用もあるのです。だから、痛くなる前に鎮痛剤をのむのが正解。痛くなる前にのめば同じ量でも効果が高く、早めにのめば少ない量で効かせることができます。

 生理になったらすぐ、あるいは生理が来ると予測できる日に痛くなる前に鎮痛剤をのむのが正解。我慢しなくちゃ、と思う前に、体で何が起きているのかを理解し、科学的な知識も使って対処することでより快適にすごせるんです。

 今わかっていることで科学的に生理痛に効果がありそうなのは、禁煙。あとはリラクゼーション、鍼灸、生理痛体操です。痛みに運動がいいことはよく言われます。痛いと運動制限をしてしまう人がいますが、それは、逆に痛みの悪化につながる可能性があります。