――低用量ピル(LEP)を使って、つらい症状や生活はどのように変わりましたか?

痛みの軽減を実感。「生理が来ることに怯えていた人生」が変わりました

南部さん 3カ月目ごろから、だんだんと毎月の症状が軽くなってくるのを感じ、半年後にはこれまでの苦しみが嘘のように、生理による生活の支障がなくなっていました。出血量、頭痛、めまい、吐き気などの体の症状が激減。毎月生理が近くなることに怯えたり憂鬱になったりする人生を手放せて、本当に良かったです。特に、昨年、行政書士試験を受験したときは、ピルで痛みをコントロールできてよかったと実感しました。仕事と子育てを安定した体調で両立できているのは、私の場合はピルのおかげ。学生時代は、生理が来ることにびくびくしながら過ごしていましたから、今は、大きく人生が変わりました。

印南さん 私も生理の悩みから解放されました。痛みはもちろん、劇的に出血量が変わりました。こんなに簡単に世界が変わるのか! と驚くと同時に、もっとみんなに知って欲しいと思いました。私の前職でもある客室乗務員は、つらくてもトイレに行くタイミングがなかなかない仕事。だから、かつての同僚にも伝えたいし、営業職の方なども仕事に集中できると思います。

池田先生 月経は、子宮内膜がはがれることで起こります。低用量ピルを服用していると、子宮内膜が厚くならないので、はがれる量も少なくなって、結果的に出血量が減ります。痛み物質といわれるプロスタグランジンの分泌量も少なくなるため、痛みが減るのです。

 私は以前、内科医をしていました。内科では、片頭痛、関節痛、過敏性腸症候群などの痛みにそれぞれの薬や治療法があり、それぞれに効果があります。産婦人科医になってみると、生理で困っている人はとっても多く、そしてピルを使ってみると効果を実感する人が多く、使っている間はずっと症状が抑えられて快適に過ごせる。処方する医療者として、薬物治療の選択肢のひとつに、こういった薬があることが嬉しいです。

――読者を代表して、婦人科医に聞きたいことは?

種類によって合う、合わないはある?

印南さん 低用量ピルには種類がありますが、体質によって向き、不向きがありますか? 何種類かのピルを服用し、種類によって効果が若干違い、合う、合わないがあるなと感じました。自分にベストな薬の見つけ方を知りたいです。

池田先生 おっしゃる通り、さまざまな種類があって、日本で発売されている低用量ピルの成分は4種類あります。低用量ピルは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモン)の合剤ですが、プロゲスチンの種類がピルによって違っているのです。そして、このプロゲスチンの種類で合う、合わないが生じます。合わないなと感じたときは、その成分が合わなかった可能性が高いので別のピルを試してほしいです。

妊娠・出産への影響は?

南部さん 過去の私のように、低用量ピルで生理を止めると、将来の妊娠・出産への影響があるのでは? と心配する方がいると思います。ピルの妊娠・出産への影響について、教えていただけますか?

 私も生理は、毎月来ることで体が整うのだと思っていました。生理を止めてもいいなんて、ピルをのむまで知りませんでした。

池田先生 生物として、排卵しているのに妊娠していないことのほうが実は不自然なのです。妊娠をせず、生理がずっとあるせいで、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が増え、不妊にもつながるという現状もあります。だからといって現代に生きる私たちの多くは、10人も子どもを欲しいと思わないですよね。

 今の医学では、妊娠しなくていい期間は、低用量ピルで排卵を止めて、月経を起こさないほうがいいという考え方になっています。こんなに排卵回数が多いのは、体にとっても負担です。ピルをのんでいる間は、卵巣は休むことができます。そして、子どもが欲しくなったときにピルを止めれば、排卵も再開し妊娠できる体に戻ります。