女性の体や生理への理解促進と働きやすい社会の実現を目指す『女性のための働き方改革! 「生理快適プロジェクト」』(協賛/あすか製薬、バイエル薬品、富士製薬工業)。産婦人科医の甲賀かをりさんとSHELLYさんが生理痛について語り合ったオンラインセミナー(1月22日に実施)のトピックをリポートします。

1回目 SHELLYさん×甲賀先生 生理痛の上手なマネジメント法 ←今回はここ
2回目 薬を使わず生理痛を軽くするには?14の質問に回答
3回目 サッカー米女子リーグ選手 川澄奈穂美さんが語る
4回目 10代の娘が生理で困ったら、親としてどうする?
5回目 読者が婦人科医と生理痛をぶっちゃけトーク!
6回目 あの人に聞く、つらい生理のマネジメント体験(予定)

SHELLYさんと甲賀さんが本音でトーク。聞き手は日経BP総研上席研究員 黒住紗織
SHELLYさんと甲賀さんが本音でトーク。聞き手は日経BP総研上席研究員 黒住紗織

生理痛は、あなたが悪いわけじゃない。困っているなら「病気」として治療できる。

甲賀かをりさん
甲賀かをりさん
東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座准教授。千葉大学医学部卒業、東京大学大学院修了。プリンスヘンリー研究所・イエール大学留学、東京大学医学部講師などを経て2014年より現職。

 日本女性の2人に1人が悩んでいる生理痛(*1)。「つらくても医師への相談を躊躇している」という声も少なくありません。「生理痛で困っている人は、ぜひ婦人科に相談してほしいです。生理痛の背後に病気が隠れていることもあり、特に左下のリストに該当する人はぜひ受診を」と呼びかける甲賀かをりさん。

 今回の事前参加者調査(465人)でも「生理痛があり困っている」人が51%もいました。

 生理痛が増えているのは、昔の女性と比べて現代女性の生涯の生理回数が増えていることが要因の一つです。昔の人は生涯で50回の生理だったのに対し現代人は450回程度と9倍に増えたという研究報告も(*2)!

 また「私が健康じゃないから、不摂生しているから生理痛があるの?」と自分を責めている人がいますが「それは間違い! あなたのせいではありません!」と甲賀さん。生理痛の原因に病気があることも少なくなく、最も多いのは子宮内膜症。続いて子宮腺筋症、子宮筋腫。また、病気がなくても生理痛は起きます。痛みの出やすさは、日焼けしやすい人とそうでない人がいるように体質の違いです。

痛みの感じやすさは体質の違いです

 痛みは、子宮内の月経血を体外に排出するために、プロスタグランジンという物質が分泌され、子宮を収縮させることで起こります。この物質に対して敏感で、痛みを感じる人がいるのです。

 では、病気ではない生理痛は放っておいてもいいの?

 「いいえ。生理痛がある人は、子宮内膜症などになりやすく、不妊症の原因になることもわかっています。生理痛は万病のもと。本人が困っていれば『月経困難症』という病名がつき、保険で治療ができるので、早く相談に来てほしい」と甲賀さん。

こんな人は受診を! 痛みの背後に病気があるかも?
□ 生理痛で仕事や生活に支障が出る
 (例:鎮痛剤が手放せない/学校や会社を休んでしまう/寝こんでしまうなど)
□ セックスのとき、奥の方が痛い
□ 排便痛がある
□ 生理のとき以外で下腹部が痛むことがある
□ 生理のときにのむ鎮痛剤の量が以前より増えてきた
□ なかなか妊娠しない

生理痛は人と比較しにくく、どの程度で受診すべきか悩むもの。一つでも当てはまる人は躊躇せず受診を。

 「大したことがなかったら恥ずかしい」という心配も無用です。「その時点で病気がなかったというカルテの記録は、のちに病気が見つかったときの大事な資料なのです」(甲賀さん)。

 婦人科の受診にはメリットがあるはずと甲賀さん。「診断だけでなく生活のアドバイス、治療(右下コラム参照)ができるので、痛みや困り事はかなり軽減するはずです」。早く手を打てば悪化を食い止めることもでき、手術で治せる病気も。

 「生理痛は、女性の体・精神・仕事に負の影響を与えています。ぜひ早期に対処して仕事も私生活もパワーアップしてほしいと願っています」(甲賀さん)。

婦人科受診のメリット
1 病気がなくてもその記録を残すと、病気になったときの大切な資料に。
2 様々な治療・対処法がわかる。
3 日常生活の留意点や痛みや不調の記録の付け方などを教われる。
4 早く対処すれば進行を抑えられる、治せる病気がある。
病院での生理痛の3大治療法
● 鎮痛剤
痛みの原因になるプロスタグランジンを減らす。

● 漢方薬
背後に病気のない月経困難症に。低用量ピルとの併用も可能。ピルを使えない人にも。

● 低用量ピル(LEP剤)
生理痛(月経困難症)の治療で使用される低用量ピル(LEP剤という)は、保険が適用される。服用期間などで複数の種類があり、医師と相談して自分に合ったものを選びたい。
*1 Journal of Medical Economics 2013; Vol. 16, No. 11 :1255-1266.
*2 American Journal of Obstetrics & Gynecology:AUGUST,201-203,2016