生理が引き起こす不調は痛みだけじゃない!

 上記のリストからもわかるように、下腹部痛、腰痛、頭痛など一般に生理痛と思われる痛みを伴う症状に加え、生理期間中に起こる吐き気、疲労感・倦怠感、食欲不振、下痢などの身体症状、イライラ、憂うつなどの精神症状も、月経随伴症状に含まれます。

 「さらに、日常生活に支障があるほどつらい生理痛である「月経困難症」の人は、生理痛以外の月経随伴症状の種類も多く、つらさの程度も大きくなることがよくあります。

 月経困難症は、その痛みの背景に子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などの病気がある「器質性月経困難症」と、痛みはあっても特に病気のない「機能性月経困難症」の2つに分類されます。

 背景に病気のない「機能性月経困難症」の場合でも、月経随伴症状としてつらい痛みだけでなく、不眠、眠気、絶望、抑うつ、集中力低下などが起こる場合があり、QOL(quality of life=生活の質)の低下の原因になります。

 実際、月経随伴症状によって、学業や仕事に支障が出たり、身体機能の低下でスポーツが楽しめなくなったり、成績や仕事の生産性が低下したり、友人関係や家族関係にも支障をきたす、などの困りごとが起きています。

 また、放置すると将来、不妊症、うつ病などにつながる可能性もあります。

 一方、「器質性月経困難症」の場合は、上述のように、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫などが合併していますが、これらの病気にかかっていると、さらに将来、不妊症、妊娠合併症、貧血、心脈管系疾患、血栓症、骨粗しょう症などの心配があります」と甲賀さん。

多様な症状が起こるわけ 女性ホルモンの増減も影響

 では、生理のときに、痛みだけでなく、このような月経随伴症状が起こるのは、どうしてなのでしょうか?

 「それは、生理痛が起こるメカニズムと関係しています。

 生理痛が起こる原因はいくつかありますが、まず考えられるのは、ホルモンに似た物質“プロスタグランジン”の分泌です。プロスタグランジンは、子宮を収縮させて、不要になって剥がれ落ちた子宮内膜が、血液とともに子宮の外へ押し出されるように働く大切な物質です。

 しかしその作用は、子宮への血流を減少させ、子宮内の神経を痛みに敏感にさせるという側面も持っています。そのため、プロスタグランジンが働き過ぎてしまうと、必要以上に子宮が収縮し、痛みを引き起こしてしまうのです。

 生理の出血で子宮が収縮すれば、神経を刺激し、下腹部に違和感が起こりやすくなります。それが腰痛、腹痛、おなかの張りなどにつながります。

 さらに、プロスタグランジンは、腸管の動きにも影響を与えるので、人によっては便秘になったり、下痢を起こしたり、といったおなかの症状が出るのです。

 若い人や出産経験のない人は、子宮と腟をつなぐ部分が狭くて硬いため、生理の血液が子宮から腟にスムースに流れ出ず、子宮の収縮がさらに強くなり、痛みが起こることがあります。

 さらに、そのような人では、生理の出血の一部が、子宮から卵管側に逆流してお腹の中に流れ込むこともあります。そうすると、生理の血液に含まれるプロスタグランジンやその他の因子が腹膜を刺激することによって、さらに痛みが出ることも考えられます」(甲賀さん)

 「プロスタグランジン以外の原因もあります。生理が始まる時には女性ホルモンのプロゲステロンの分泌が急激に減りますが、その急激な変化によってイライラや疲れ、吐き気が出る人もいます。

 また、短期間に血液が大量に失われるので、貧血症状が起こり、動悸や息切れなどの症状を訴える人もいます。

 さらに、これらの痛みや不快感を我慢していると、体への負担が大きくなり、それが、自律神経など、全身のバランスをつかさどるシステムにも支障を来し、不眠、眠気、集中力の低下、食欲不振などがおきます。

 つらい生理痛は、心理的な負担も増やします。ストレスによってイライラする、憂うつになる、ぐっすり眠れない、集中できないなどの精神症状も出やすくなるのです」(甲賀さん)