多すぎる排卵回数にリスク。妊娠前の子宮を守る大切さ

種部 私は医師になって初めて、生理を必要以上の回数、毎月くり返すことのリスクや、一生の間の排卵回数が多すぎることのリスクを学びました。出産回数が少ない現代女性にとっては、生理が毎月続くことのほうがむしろ“不自然”で、生理痛改善のためにも、低用量ピルで排卵を抑えておくことのベネフィットがあることを知ってほしいです。

 生理痛を治療せずに放っておくと、月経困難症や子宮内膜症になるリスクが高まり、そうなると、産みたいときに産めなくなる可能性もあります。妊娠、出産前に子宮を病気から守ることは大切です。

スプ! 私たちは、がんがあれば手術や薬で治療するし、糖尿病になればインスリン注射を使うなど、何か病気になれば適切な治療をします。それなのに、女性にかかわる医療になると、なぜか広がりにくい傾向があると思います。低用量ピルの低い普及率もそうですし、例えばフィンランドは女性の9割が無痛分娩で出産しますが、日本は数%しか無痛分娩を選択しません。男性の関心の薄さもありますが、女性側にも「女性はこうあるべき」という思い込みもあるのかもしれません。

種部 産婦人科でも「生理やヘルスケアを専門にすると教授にはなれない」という風土があり、がん、妊娠・出産、不妊が産婦人科の専門領域の花形です。生理トラブルは多くの人が困っているのに、なかなか研究が進んでいきません。「耐えてこそ母、我慢するのが女性の美徳」といった考え方が日本にはありますよね。科学者も、男性中心の視点からなかなか脱却できずにいます。でも現代はもっと合理的に科学で考える視点を大事にしなくては。

 日本は、性教育が世界から大きく遅れていることも問題です。学ぶ機会が提供されていないのです。イギリスや北欧では、小学生、中学生の理科の授業で、日本の産婦人科医が学ぶレベルの「月経の基本」「体の基本」などを男女ともに学んでいます。