つらいなら病院に行こうよ! 対策してQOLをアップ

日経BP総研 生理快適プロジェクトの調査結果(20~45歳未満の働く女性2000人対象、2021年実施)
  • ● 生理でつらさを我慢している日数 毎月平均4.85日(年換算約60日)
  • ● 生理がない時を10割とした時の生理時の生産性 6割に低下
  • ● つらいのに婦人科を受診しない人 6割
  • ● 病院に行くほどの症状ではないと思う 61.9%(症状が強い人でも55%)
  • ● 生理がつらいのは当たり前 20.8%
  • ● つらいときだけ我慢すればいい 35.8%

上の結果のように、つらさを当然のこととして我慢し続ける人が大勢います。

スプ! 生理休暇が取りづらいとよく聞きますが、休暇を取るほど生理がつらいなら「病院に行こうよ」と言いたいです。生理トラブルに悩む人が、その原因を解明したり適切な治療を受けるようになれば、生理休暇を取らないといけないくらいつらい人も減ると思うんです。女性たちの約半数が、生理で生産性が約6割に落ちるというような客観的なデータを会社に示し、環境を変えてゆくことも重要だと思います。

種部 その通りですね。生理トラブルによる労働損失があることを示すことで、企業内の取り組みが進んだ例を私はいくつも見てきました。あと少しで、企業も変わってゆくと思います。そうした流れを加速させるためにも、公教育の中で男女一緒に二次性徴や生理のことをきちんと学べる環境が重要です。この問題はフェミニズムで片づけるのでなく、サイエンスです。

やりたいことを実現するために体をケアするという発想

「つらいのに受診しない人が6割」。どうしたら受診するようになるでしょう?

スプ! 生理トラブルに悩んでいる女性の中には、仕事や家事育児に追われて忙しい人も多いです。だからこそ、体のことで悩んでしまう時間がもったいないと思います。適切な医療で生理トラブルを解消することができたら、仕事もプライベートも、QOLは確実に上がります。

 職場の問題や課題を解決するのは大変だけれど、自分の体の不調を解決するために病院にいくのは、とてもシンプルなこと。自分の体をケアすることで、仕事もプライベートもQOLを上げられるという意識が、もっと広がったらいいなと思います。

種部 女性が出合う人生最初のQOL低下は、生理トラブルや月経周期に付随した心と体の不安定さです。二次性徴による生理で自分の体がコントロールできないことを初めて経験します。男性なら病院に行くことのない年代ですが、女性は生理が始まった瞬間に健康問題に出くわすのです。

 生理をきっかけに人生プランをたてることの重要性を知って欲しい。海外に留学したい、キャリアを積みたい、将来子どもを産みたい……。そのためには子宮内膜症にならないためにも、生理痛(月経困難症)を治療することが大事です。

 どうか、自分一人で背負わないで産婦人科を受診してください。そうすれば、人生のアドバイスと体の治療、どちらもしてあげることができます。産婦人科医は女性の人生の伴走者です。たとえば、子宮筋腫があるなら、このくらいなら様子を見ていて大丈夫、これは薬で治療しよう、こうなったら切除するといいよ、とその都度アドバイスできます。生理にまつわるQOLの低下は、婦人科で解決できることがほとんどです。そして、もし相性が合わなければドクターを変えていいということも伝えたいです。

スプ! 婦人科の先生が向き合うのは女性の人生そのもの、ですよね。今はSNSのおかげで情報が行き渡り、「体のことは人生に影響するから、体を理解して体のマネジメントを適切にすることが重要だよ」と発信する人が増えています。当事者の女性が発言できるようになってきました。

 もし生理痛がつらいままで生活していたら、私の人生は今と違ったものになっていました。今は日々、自分のやりたいことを効率的に行うために、生理の煩わしさを考えずに、好きなことにノンストップで取組めています。まさにプライスレス! やりたいことを実現するために体をケアすることは大事です。私は、犬山紙子さんの「IUSを装着したら生理が楽になった話」を読んで勇気づけられました。そういう情報って大切です。

種部 日本人は、特に生理のことは周りには話さない、我慢するのがいいという文化が長かった。生理痛は個人の問題だから、自分で解決するものだという感覚でした。更年期障害についても同じでしたが、最近は更年期症状を語る人が増えています。イノベーションが起きつつあると感じます。

 生理についても、少しずつ、口コミで「生理痛を治療してよかった」という声が友達や同僚同士の間で、横展開で広がっていると思います。私が企業の講演などで生理痛の治療効果の話をすると、受講をきっかけに治療したいと受診してくださる人が現れます。「生理痛を改善できたので受験が安心してできた」「生理痛で休む人が減り、労働効率が上がった」という声が学校や企業の中の個人レベルでも聞こえてくるようになると、治療しようという人が増えてくるでしょう。