生理への意識の低さと、女性活躍の遅れに関連が?!

「イノベーションが起きるにはあと少し」。それを進めるには何が必要でしょう?

種部 当事者が声を上げることから始まると思います。でも、きっかけがないと話せないので、同僚や友達など横にいる人と話して共有できる場、健康教育の場があることが大切です。企業内でも語り合える場をつくることから始めてもらえたらと。

 生理への意識が海外と異なる日本の現状は、女性がキャリアを重ねたり、社会で活躍することが遅れていたりする現状と大いに関連していると思います。「言えなかった」「つらさを語れなかった」という人が多いですが、勇気を出して語ってみると、同じ思いの人が必ずいます。自分だけだと思っていたことはそうでないことがわかり、その悩みはマイノリティではなくなり、共感者が増えてイノベーションが起こり、我慢しなくていい方法をみんなで一緒に考えようよ、という動きが出てきます。

スプ! 私が2022年4月に立ち上げた法人向けのD&I推進支援サービス『Cradle(クレードル)』でも、生理トラブルに悩む女性たちのために、語り合える場をつくっています。導入企業には女性特有の体の悩みに関するオンラインセミナーや従業員向けのヘルスケアサポートなどを提供し、働く人それぞれがライフプランとキャリアを両立しやすい環境づくりをサポートしていますが、当事者だけでなく管理職や人事担当の方も学びを高める機会にもなっています。会社がクレードルのサービスを導入することで、社長が女性支援に本気で取り組むんだというメッセージが社員にも伝わります。

職場の男性には個人の話でなく客観的なデータを示しては

職場の男性に理解してもらうにはどうしたらいいか、とよく聞かれます。アドバイスはありますか?

スプ! 男性には、つらさがどういうものなのか、どの程度かは、話しても理解されにくい事もあると思います。職場の男性管理職には、個人の話としてではなく、データを見せるのが効果的だと思います。女性の生産性が生理によって4割も下がっている、というこの日経BPのデータを知らせてみてはどうでしょうか?

 あとはやはり、不調があればぜひ婦人科を受診してほしいですね。良い婦人科医を見つけて、体の不調をうまくケアすることが出来れば、それだけできっと仕事の効率や生産性が上がり、快適で、効率的な生活が待っています。

種部 生理トラブルを解消することによる費用対効果がわかると企業側も動きやすいと思います。健康経営、なでしこ銘柄、ダイバーシティ、女性活躍推進法などの声が国からも上がって来ていますので、人事部や経営陣を後押しすることに繋がるのではないでしょうか。私のところにも、社員の声があるからと、人事部から健康支援のやり方について問い合わせが来て、女性支援のサービスがあることを伝えると、導入してくれるところがあります。

 話を持って行く男性管理職は、生理や更年期で困っている娘や妻をもつ父親世代を選ぶといいです。娘や妻のことから男性にも当事者になってもらうのです。例えば、「お願い型」としては、婦人科を受診すれば生産性が上がるんだけど、受診できる時間をくれませんか? もうひとつの「提案型」は、困っている状況を数字で見せて、女性の生理周期でしんどいときに頑張れと言われてもできない。だから婦人科を受診する時間を職場として作ってください、と提案するんです。

スプ! 私はこれまで“知識は味方になる”と強く信じて生きてきました。女性も男性も働きやすい職場をつくるには、そこで働くすべての人が正しい知識を持って、情報共有することも大切です。かつて、私が生理痛を我慢するしかなかった頃のように、「仕方ない」で終わらせない社会になってほしい。

種部 自分の健康の重要性を知って、自分自身が積極的に関わって、自分の未来は自分で切り開くという意識を持っていい時代です。生理のせいで何かをあきらめる人を減らす社会を作るために、個人ができることはたくさんあります。

 「我慢しなくちゃ」「個人的なことだから」と自分を押し殺している女性たち、ぜひ一緒に声を上げませんか?

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取材・文/増田美加(女性医療ジャーナリスト) 撮影/稲垣純也 構成/黒住紗織(日経BP総合研究所 生理快適プロジェクト)

生理快適プロジェクトとは?
「生理快適プロジェクト」では、女性たちが自身のカラダのリズムを適切にマネジメントすることが“自分の健康向上”と“仕事のパフォーマンス向上”、“日常生活の快適”につながるという事実の啓発と、そうした女性を企業や社会が支援することの必要性をメッセージする活動を行っています。
同時に、女性たちの生理トラブルを減らすことが、女性活躍、不妊対策、生産性の向上につながり、SDGs的にも役立つとの考えから、2021年夏には「生理で悩む人を減らすためのアクションプラン」を発表。女性・企業・社会が取り組みたい具体的な方法などを下記のサイトで紹介しています。

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