生理に伴う悩みの解消には、鎮痛剤や漢方薬などの治療法が知られています。避妊目的やつらい生理痛の緩和など、女性の味方になってくれる低用量ピル(LEP、OC)もその一つ。ところがなぜか、「妊娠しにくくなる」などといった不安をあおるような“都市伝説”があるみたい。そのことが低用量ピルを利用する人のハードルを上げている面も。低用量ピル(LEP、OC)に関する正しい情報とともに、服用時ののみ忘れや出血などのさまざまな素朴な疑問について、産婦人科医の甲賀かをりさんに聞きました。正しい知識を身につけて、生理痛を我慢しない快適な生活を手に入れましょう!

1回目 現代女性は昔の女性の約10倍、生理の回数が多い!?
2回目 女性の味方、生理痛の治療薬は避妊薬と同じ成分!
3回目 私の生理は大丈夫?「生理の異常チェックリスト」
4回目 頭痛、脱力感、イライラ…。実は生理が原因かも
5回目 教えて! ドクター 生理と低用量ピルの“都市伝説”の真実 ←今回はここ
6回目 シェリーさんが語る「生理との上手な付き合い方」

* 低用量ピルには、避妊目的で使用される経口避妊薬(OC)と治療目的で使用される保険適用のある低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤(LEP剤)があります。

Q1 将来、子どもを産みたいと思っています。低用量ピル(LEP、OC)をのむことで、妊娠しにくくなる心配はないの?

A1 低用量ピル(LEP、OC)を長期間服用しても妊娠率に影響はありません。

 「ピルを服薬すると将来、妊娠しにくくなる」という噂は、いつか妊娠・出産を考えている女性にとって気になる話ですね。

 けれども、これに関してはまったくの嘘です。低用量ピル(LEP、OC)を長期間服薬しても、服用を中止したあと妊娠率が下がるというデータはありません。

 それより、低用量ピルをのんでいる間は排卵がストップし、その間に子宮や卵巣を休ませることができます。そして、低用量ピルの服用を中止すれば、排卵は再開します。再開までの期間には、個人差はありますが、服用をやめて1~2カ月で生理が戻ってきて、排卵も起こります。つまり、体は妊娠できる状態に戻るのです。

 もしも、低用量ピルの服用をやめたのに、排卵しない、あるいは妊娠しないということであれば、婦人科系の病気の可能性があるか、もともと妊娠しにくい体質であるのかもしれません。

 妊活するまでは、低用量ピル(LEP、OC)で生理痛の改善や避妊など行い、妊活をスタートすると決めたら、早めにかかりつけ医に相談するのがベストです。(甲賀かをりさん)

Q2 低用量ピル(LEP、OC)で排卵を止めると、卵子を多く保存できるってホント?

甲賀かをりさん
甲賀かをりさん
東京大学 大学院医学系研究科 産婦人科学講座 准教授

A2  排卵を止めても卵子は自然に減るので、卵子を多く保存できるというのは嘘。でも、卵巣を休ませることで、将来の妊娠にメリット(有利)が出る可能性はあるかも、、、

 低用量ピル(LEP、OC)を服用すると、排卵がないので卵巣を休ませることができます。ただし、排卵のあるなしにかかわらず、卵子は一定のペースで減っていきますので、排卵を止めることが卵子の数を温存する(保っておく)ことにはつながりません。

 けれども、排卵がないことは、結果的に子宮内膜症の発症や進行が抑制されることにつながることもあり*1、不妊症の予防や将来の妊娠にも有利になる可能性はあるとお伝えしたいです。

 低用量ピル(LEP、OC)を服用している間は、排卵が抑制されます。排卵は、妊娠のためには必要なことですが、今すぐ出産したいという予定がない場合、卵巣を休ませておくことが、かえって将来の妊娠のために良い可能性があるともいえます。(甲賀さん)

*1. JAMA. 1986 Apr 11;255(14):1904-8.

Q3 低用量ピル(LEP、OC)をのむと太るって聞いたけれど?

A3 服用初期にむくんだり、体重増加する人も一部いますが、全ての人で起こるわけではありません。

 私の外来でも、「ピルは太るって聞きました」と質問してくる女性は、たくさんいらっしゃいます。確かに、服用初期にむくんだり、一部の人は体重増加する可能性がありますが、全ての人で体重増加が見られるわけではありません。

 私の臨床体験では、低用量ピル(LEP、OC)によって体重が増えることがあるとすれば、脂肪ではなく水分であることが多いです。つまり、むくみです。

 特に、最初の服用直後は、低用量ピル(LEP、OC)に含まれるプロゲステロンによって、体内の保水力が高まり、水分が体重を多少増加させると考えられているからです。

 低用量ピル(LEP、OC)に慣れてくれば、むくみや体重増加の心配も減ってゆきます。

 また、「ピルをのむと食欲が増進する」という話もあります。これも、低用量ピル(LEP、OC)に含まれているプロゲステロンに、食欲を増進する作用があるからです。人によっては、空腹感が強くなることがあります。また、不調がなくなり健康になって、食欲が出ることもあると思います。

 けれども、そのことを知っていれば、気をつけることができますので、気になる方は、体重をまめに測る、食事量に気をつけるなどをしてみましょう。

 万が一、低用量ピル(LEP、OC)をのみ始めて2~3カ月たっても、むくみや食欲増進がおさまらないという人は、かかりつけ医に相談して、低用量ピル(LEP、OC)の種類を変えてみましょう。種類を変えることで、解決する人もいます。「私にはピルは合わない!」と決めつけず、かかりつけ医に相談を。(甲賀さん)