香港で2019年11月24日に行われた区議会(地方議会)議員選挙では、民主派が地滑り的勝利を収めました。今回は、この選挙が香港の今後の選挙に及ぼす影響などを最近のニュースからピックアップします。

 米国では11月27日、上下両院がともに可決していた「香港人権・民主主義法」にトランプ大統領が署名、同法が成立しました。香港における自治の状態を米政府が毎年検証したりするなどの内容。これに対して中国は内政干渉だとして激怒するなど、香港デモの騒動の余波は大きくなっています。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が同日、速報として伝えました。

選挙結果に喜ぶ市民らの写真
選挙結果に喜ぶ市民ら。若い層が多い(2019年11月25日) 写真:AP/アフロ

 過去6カ月間にわたって民主派のデモは激しくなってきていたものの、香港警察とデモ参加者との衝突は投票日にはやみました。市民は朝早くから会場に足を運び、香港での選挙史上最高となる約294万人が投票、投票率は71.2%まで上がりました

 香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によると、この投票率は、「逃亡犯条例」改正案(拘束した容疑者を中国へ引き渡しできる条約)を(市民が政府に)撤回させたことの影響に対する「事実上の住民投票」の結果と見られています。

 今回の選挙の影響は広範囲にわたります。区議会は、行政長官を選ぶことのできる選挙に117議席が割り当てられることになります。

 ただし懸念もあります。記事は、民主派の圧勝について、地元のために働く人への支援というよりは、「抗議の投票」によるものだと指摘。初当選の議員に実績はないので、今後、課題への対応を誤れば、親中派の返り咲きといった反動に遭うかもしれない、といいます。

 香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官はこれまで、デモ隊と警察の激しい衝突を許すなど危機対応に失敗してきました。記事は、林鄭長官はこの機会を、市民との和解のために利用すべきだと結んでいます(編集注:同長官は11月26日、辞任を否定。デモ参加者が求める普通選挙の実現などの「五大要求」は再考しないと発言した)。

「私も香港人」、南アジア系市民が持つ願い

 香港で半年間続いたデモ活動を、自らのアイデンティティーを見直すきっかけにした人もいます。香港の人口は約9割を中国系が占めていますが、南アジア系などマイノリティーが住む場所でもあります。英BBCの動画リポートの中で、あるパキスタン系の男性は「香港で生まれた私も、香港の人間だ」と意を新たにしました。

 彼が働く場所は、普段、地元の人はあまり立ち寄りません。デモをきっかけに地元の人たちを助けようと、男性を含む南アジア系の友人たちは、暑い日にデモ参加者に水を配ったりして一緒にデモを盛り上げました。

 この男性が通うモスクの門に政府側が青色のスプレーをぶちまけたときは「信じられなかった」と言います(政府は「間違いだった」として後で謝罪)。しかし「スプレーの汚れを落とそうとデモ参加者が一緒に掃除してくれた」。香港はいろいろな人が住む素晴らしい場所だとして「エスニックマイノリティーではなく、単に香港人だと呼ばれるようにいつかなればいい」と男性は願っています。

・Trump Signs Hong Kong Democracy Legislation, Angering China (The New York Times, November 27, 2019)
・People have spoken at polls and Carrie Lam must now respond in order to end crisis (South China Morning Post, November 25, 2019)
・'I was born here, I'm a Hongkonger too' (BBC, November 27, 2019)

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