知の巨人はどうやって生まれるのか

 さて次のニューストピックを紹介します。

 ベルギー出身の9歳男児、ローラン・シモンズ君が11月22日、世界最年少で大学を卒業する見込みだとロイターが伝えました。約1年で高校のカリキュラムを終えたシモンズ君は、普通は3年かかる大学のプログラムを9カ月でほぼ履修し、今年12月に卒業間近だそうです。オランダのアイントホーフェン工科大で電気工学を学ぶシモンズ君は、大学院に進み、将来的には人工内臓をつくりたいと話しています。

 世の中には驚嘆すべき能力を持っていたり、複数分野にまたがる大きな功績を残したりする人たちがいます。すぐ頭に思い浮かぶのは15世紀半ばから16世紀初頭のイタリアにおいて、芸術や解剖学、ものづくりの分野でその異能ぶりを発揮したレオナルド・ダヴィンチでしょうか。

 英BBCは「何が天才をつくるのか」というタイトルで、polymath(原義は「多くの分野にわたり知識を持っている人、博識者」。最近は仮想通貨の1つの名前としても認識されている)とは何か、どういう環境がpolymathを育てるのかについて記事を掲載しました。例として女優にしてピアニスト、GPSやWiFiといった今日の携帯技術の基になる技術を発明したヘディ・ラマーを挙げています。

 同記事によると、最新の調査では、複数の興味・関心を追求すると、人生への満足度や仕事の効率性、創造性を向上させるなど利点が多いことが分かってきました

 多くの子どもたちは違う分野に興味を持ちますが、学校や大学、仕事において専門を絞る形で進路を選んでいきます。ジョージ・ワシントン大学のアンジェラ・コテレッサ教授はある条件を設定し、この条件を満たす天才たちを多く調査してきました。こうした人たちに共通して見られることは、好奇心の強さ、そして周りの期待に押しつぶされることのないレジリエンス(回復力)を持っていることでした。

 いくつもの分野を追いかけると「Jack of all trades is the master of none」(多芸は無芸)となりそうですが、実際は、多くのことに興味を持つと創造性や生産性が触発されるという科学的根拠が認められているそうです。

・Belgian boy on track to become world's youngest university graduate (Reuters, November 21, 2019)
・Why some people are impossibly talented (BBC, November 19, 2019)

から引用