関口さんの最近のイチオシ本

関口 例えば、最近のイチオシは、作家や建築家などさまざまな顔を持つ坂口恭平さんの料理日記『cook』(晶文社)。坂口さんがご飯を炊いて、朝昼晩と料理を作って「明日のご飯は何にしようかな」と考えるという繰り返しです。この本を読んでいると「ただご飯を炊いて、卵焼きを作るだけでもすごくおいしそう」「料理を自分で作って自分で食べる。究極はそれでいいんだ」と思えます。気持ちも体も疲れている時、実際に作って食べてみたら本当においしかったんですよ。疲れている方に、ぜひおすすめしたいですね。

 坂口さんは別の書籍で、「自分がどうしたら元気になるのか」「どうしたら自分はよくなっていくのか」を考えて、生活リズムを整えたり、人との付き合い方を見直したりすることを「自分の薬をつくる」という言い方をしているんですけど、その考え方もすごくいいなと思います。

作った料理のレシピや感想が手書きで書かれている
作った料理のレシピや感想が手書きで書かれている

「小さな失敗でくよくよしている」と気づく

―― 精神的に参っている時は、あえてエンタメ性の強い本でバランスを取っているんですね。

関口 その意味では漫画家・吾妻ひでおさんの『失踪日記』(イースト・プレス)も大好きです。吾妻さんが、仕事をしている日々に疲れて失踪しちゃう。山で段ボールを敷いて寝たり、そのへんで採れた大根を食べたりという過程を淡々と描いてある本なんです。それを読むと「普通に朝起きて、寝て、暮らすということだけでも大変なんだ」と感じるんですよね。それに日がのぼったり、メジロが鳴いていたりという、何気ない描写にも癒やされます。自分は、小さな失敗で何をくよくよしていたんだろうって。