2018年11月に第1子、2020年12月に第2子が誕生した、トランスジェンダーの杉山文野さん。彼はパートナーの女性と、ゲイの親友の「ゴンちゃん」こと松中権さんの3人で親になることを決め、現在はパパとして子育てに奮闘中です。3月27日に、新刊『3人で親になってみた ママとパパ、ときどきゴンちゃん』(毎日新聞出版)を出版した杉山さんに、育児や家族について聞きました。

杉山文野(すぎやま・ふみの)
杉山文野(すぎやま・ふみの)
1981年生まれ、トランスジェンダー。フェンシング元女子日本代表。早稲田大学大学院でセクシュアリティを中心に研究し、2006年『ダブルハッピネス』(講談社)を出版。卒業後はバックパッカーとして南極や世界約50カ国を巡り、一般企業勤務後に独立、飲食店経営をしながら講演活動などLGBTQの啓発活動を行う。日本初となる渋谷区・同性パートナーシップ条例制定にも関わり、渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員や東京レインボープライド共同代表理事を務める。著書に『元女子高生、パパになる』(文芸春秋)、『3人で親になってみた ママとパパ、ときどきゴンちゃん』(毎日新聞出版)などがある

3人で親になってみた

日経doors編集部(以下、――) ゲイの親友である松中権さん(以下、ゴンさん/ゴンちゃん)から精子提供を受け、体外受精によってパートナーの女性が第1子と第2子を出産されました。3人で親となったわけですが、どんなふうに子育てをされているのでしょうか?

杉山文野さん(以下、杉山) 常に手探りで、そのときどきでやり方を変えながら、3人で協力しています。

 僕と彼女は一緒に暮らしていますが、ゴンちゃんは別の家に住んでいるので、一人目が生まれた後は、ゴンちゃんに「都合のいいときに来て」と言っていました。でも、お互いに忙しいと、「都合のいいとき」なんてないんですよね(苦笑)。だから3人で話し合って、「週1回はゴンちゃんが家に来て子どもを保育園に送る」「土日の午前か午後には公園に連れて行く」というふうに、ルーティンをつくることにしました。

 忙しさに流されてコミュニケーションを取らなくなったり、遠慮して意見を言わなくなったりすると、全員のストレスがたまっていきます。どんどん話しづらい状況になっていくので、課題があれば話し合う場を設けて、3人で腹を割って話し合う。その繰り返しですね。