家族の形は、みんな違っていい

 私と母は、良くも悪くもお互い依存し合っているなと感じます。世の中にいる人の数だけ親子関係もありますから、仲の良い親子もいれば、縁が遠くなってしまう人もいる。「親離れ」「子離れ」といった成長の過程を辿ることだけが正解ではなく、磁石のようにずっと一緒にいることが安心につながる場合もある。

 小さい頃にお絵描きをして「家族」の絵を描くとき、同級生たちはみな「一軒家の絵」を描いているのが不思議でした。どこかで、社会が「こうあるべきだ」「決まった形」をつくっていたのかもしれません。でも、さまざまな家族のあり方があって良いのだと私は思います。

「イランでは、家族代々引き継がれるのが『指輪』です。この指輪は曽祖母から母へ、母から私へ引き継がれた宝物で、もう80年以上前のもの。特にこの石は、子どもを守る石だそう。私は会ったことがないのだけれど、この指輪から曽祖母の温もりを感じます」
「イランでは、家族代々引き継がれるのが『指輪』です。この指輪は曽祖母から母へ、母から私へ引き継がれた宝物で、もう80年以上前のもの。特にこの石は、子どもを守る石だそう。私は会ったことがないのだけれど、この指輪から曽祖母の温もりを感じます」

 よく、「すごい親子だね」と言われることがあります。けれど私たちも、「親子」になるまでに時間がかかっていますし、まだまだ親子道半ばです。

 これを読んでいる人の中にも、親との葛藤を抱えていたり、子どもと向き合えているか悩んでいたりする人がいるかもしれません。でも、「自分たちの家族だけがおかしいのではないか」なんて思わないで。私たち親子もそうですし、みんな衝突しながら、道に迷いながら、何度もすれ違い、そして少しずつ近づいていく。「大丈夫、あなただけじゃないよ」ということを、心の片隅にでもいいから、覚えておいてほしいなと思います。

自らの体験を語り、同じ悩みを持つ人たちにそっと寄り添うよう言葉をつむいだ『言葉の花束』
自らの体験を語り、同じ悩みを持つ人たちにそっと寄り添うよう言葉をつむいだ『言葉の花束』

取材・文/尾崎悠子(日経xwoman doors)写真/稲垣純也

後編「サヘル・ローズ 苦しさをさらけ出し、誰かを支えたい」では、次のストーリーを展開

■他人と比べて落ち込んでしまう
■友達が少なくて寂しい
■結婚ってしなくてはいけないもの?
■失敗が怖くなったら
■壁にぶつかったときは発想の転換を