総合コンサルティング企業・アクセンチュアで、女性初のCEO(社長)に就任したジュリー・スウィート氏が20年2月に来日し、東京で記者会見を開いた。世界で50万人を超える巨大組織を導くスウィート氏は新しいリーダーの到来を思わせた。ジュリー社長の会見に続き、(下)では最高リーダーシップ兼人事責任者のエリン・シュック氏に、同社の先進的なダイバーシティ戦略の具体的な秘策について日経xwoman総編集長・羽生祥子がインタビューした。
(上) アクセンチュア女性社長ジュリー・スウィートの強みは?
(下) ジェンダー平等経営、アクセンチュアが成功できた秘策 ←今回はここ
グローバルCEOの「性別」はトピックにならない
日経xwoman総編集長・羽生祥子(以下、羽生) 先ほど、記者会見で2019年9月に就任したジュリー・スウィート最高経営責任者 (CEO)の企業戦略を聞きました。日本の組織では「オールド・ボーイズクラブ」と世界から指摘されるように、男性ばかりの偏った経営が依然として残っています。まだ実現できていない「平等の文化」ですが、何から改善していけばいいのか具体的なノウハウを聞かせて下さい。
アクセンチュア エリン・シュック最高リーダーシップ兼人事責任者(以下、シュック氏) アクセンチュアは会社として、すべての社員に対する平等を追求していますが、ジュリー・スウィートCEOの選出については、性別は関係なく取締役の中でジュリーが最高の候補者であったがゆえです。現在、取締役会メンバーは11人いまして、その中に女性は4人います。当時から複数の女性が取締役を務めていましたので、CEOを選出するにあたって「性別」はトピックにならなかったのです。
日本法人についても、私が4年前に来日したときは、女性のマネジング・ディレクター(以下MD)クラスは約20人でした。そのとき日本法人の江川昌史代表取締役社長と「これを倍増しなければいけない」という話をしました。そして現在、この人数は20人から68人になり、目標を大きく超える達成率になっています。
羽生 4年間で40人という目標が68人に。昇進した女性は、男性と同じ基準で上がったということでしょうか。
シュック氏 もちろん、男女とも同じ基準です。
経営陣が「性別の差別なし」を掲げ、実行する
シュック氏 その理由は、経営幹部がしっかりとそれを言葉に表し、言うだけではなく、男女ともに平等であるということを掲げて実行しているからです。ちなみに、日本法人の女性MDが68人に増えた現在も、昇進の基準は変わっていません。性別を問わず同じ判断基準、あるいは選択基準で選んでいるというところが、とても重要かと思います。
ビジネスがこれからデジタルにシフトする中で、事業にとってイノベーションが不可欠なものになってきています。イノベーティブになるには、やはり多様性というものが必要で、みんなが同じ考えを持ち、同じ経験しか共有できない組織は、なかなかイノベーティブになっていくことができません。
羽生 それにもかかわらず、日本企業では、「平等の文化」がなかなか経営戦略として考えられていない現状があり、どちらかというとフェミニストの活動、あるいは慈善活動のように捉えられている傾向があります。
シュック氏 アクセンチュアが2019年3月に発表した調査レポート(※1)によると、より男女比のバランスが取れた会社であればあるほど社員がイノベーティブになり、より活躍できることが分かっています。さらに、各国で平等の文化を促進し社員のイノベーション創出を推進すれば、世界のGDPは8兆ドル伸びるだろうという数字も出ています。