アフリカをはじめとした世界の少数民族を独自の感性で撮影し、注目を集めるフォトグラファーのヨシダナギさん。2020年5月25日、「ドラァグクイーン」をテーマとした新しい作品集を発表する。これまでとは異なる被写体に、なぜ挑んだのか。「カッコいい『彼女たち』は私のヒーロー」――そう語るヨシダさんに、作品に込めた思いを聞いた。
(上) ドラァグクイーンの美しさ 撮って学んだ生きるヒント ←今回はここ
(下) 家に閉じこもっていた私が、アフリカに飛び込むまで
日経doors編集部(以後、――) 「ドラァグクイーン」とは、派手な衣装やメークなどで女装するパフォーマンスの一つで、もともとはゲイ文化から生まれたとされています。これまでは少数民族を撮影してきたヨシダさんですが、なぜこの新しい被写体に挑戦しようと思ったのでしょうか。
ヨシダさん(以後、ヨシダ) フォトグラファーとして仕事を始めて、ちょうど5年目になります。実は最近、周囲から「新しい作品を見てみたい」と言われるようになって、モヤモヤしていたんです。私は、写真を撮ることが好きというよりも、私自身が憧れる少数民族の「カッコよさ」を何とかして伝えたいという気持ちが大きい。心が動かないと撮れないから、単に「他の作品を」と言われても難しくて。
でもふと、ドラァグクイーンたちがオーストラリア大陸を旅するロードムービー『プリシラ』を数年前に観て、その姿にめちゃめちゃ心を打たれたことを思い出しました。鑑賞当時は、自分がクイーンたちに会いに行くようになるなんて想像もしませんでしたが、そのときの衝撃が蘇ったとたん、撮りたくてたまらなくなったんです。
少数民族とドラァグクイーンって、全く異なるように見える人もいると思いますが、私の中で、その「カッコいいポイント」は共通しています。