薄井シンシアさんは、17年間の専業主婦生活の後、47歳で「給食のおばちゃん」から仕事復帰し、外資系一流ホテルの営業副支配人を経て、現在は大手外資系企業に勤務するという異色のキャリアの持ち主。本業以外にも専業主婦からの再就職支援をライフワークに活発に活動し続けるシンシアさんのもとには、幅広い年代層の女性が集まってくる。中には、20~30代の女性たちから、「キャリアの相談に乗ってほしい」という相談も。doors世代の女性たちが60代のシンシアさんに引かれる理由とは?

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(下) 30代で自分の人生決めなくてもいい 薄井シンシア(下)

リンクトインのインフルエンサーにも選出

 「最近、20~30代の友達が増えているんです。娘よりも若い人たちに誘われてオンライン飲み会をしたりしてね。若い人たちと話すと、刺激がたくさんあって楽しいのよ」

 そう話す薄井シンシアさんこそ、誰よりも一番刺激的な日々を送っているように見える。本業をやりながら、観光庁とのプロジェクトで主婦の再就職支援をライフワークとし、コロナ禍でもウェビナーを開いてみたり、米商工会議所のセルフブランディングセミナーを開いてみたり。つい最近は、ビジネス特化型SNSリンクトインのインフルエンサーに選ばれた。

61歳の薄井シンシアさん。17年間の専業主婦を経て47歳で再就職し、リンクトインもフル活用し、本業以外の活動も広げている(画像/シンシアさん提供)
61歳の薄井シンシアさん。17年間の専業主婦を経て47歳で再就職し、リンクトインもフル活用し、本業以外の活動も広げている(画像/シンシアさん提供)

 還暦を過ぎてなお、飽くなき探求心とバイタリティーで人生を楽しんでいるシンシアさんの原点……それは、17年間、家事と育児に真剣に打ち込んだ「専業主婦」時代にある。

30歳で、専業主婦の道を選ぶ

 フィリピンの華僑の家に生まれ、厳しく育てられたシンシアさんは、20歳の時に国費留学生として来日。大学卒業後は広告代理店に勤務し、27歳で日本人男性と結婚、30歳で出産した。

 キャリアを手放すことなど考えられなかったシンシアさんだったが、腕の中で眠る幼い娘の顔を眺めるうち、「この赤ちゃんを育てること以上に、私にとって大事な仕事があるだろうか?」という思いが湧きあがり、専業主婦になることを決断した。

 仕事を辞めてまでして選んだ道なのだから真剣に取り組もうと、家事、育児に全力を注いだ。夫の海外赴任に合わせて、リベリア、ナイジェリア、ニューヨーク、ウィーン、タイ、そして日本、と3年ごとに引っ越しを繰り返す生活。新しい国に引っ越す度に家族が元気で楽しく暮らせるよう生活基盤を整え、PTAや地域活動などにも積極的に参加した。

 再び働き始めたのは、娘の言葉がきっかけだった。

「再就職のきっかけは娘の一言でした」
「再就職のきっかけは娘の一言でした」

 「娘は17歳でアメリカの大学へ進学し、私は子育てを終えた喪失感に襲われていました。そんな時、娘から『私は専業主婦にはなれないから、お母さんのような『お母さん』になれるとは思えない』と言われたのです」