「売れている」と聞いて買う人、買わない人

 接客への反応も違います。服を買いに行って、これいいなと思ったときに、「拡散性」因子が高い人は、「今すごく、売れているんです」と言われると急に興味がなくなります。ところが、「一点ものです。きっとあなたしか似合わないと思って、あなたのために仕入れたんです」と言われたら、値段も見ずに買ってしまう。

「拡散性の高い僕は、『いいでしょう、これ今、売れているんです』と言われた途端に興味がなくなるんです」(古野俊幸さん)
「拡散性の高い僕は、『いいでしょう、これ今、売れているんです』と言われた途端に興味がなくなるんです」(古野俊幸さん)

 一方「保全性」は、周囲を自分が安心できる「仲間内」の状態にしておくことを好みます。流行っているものやみんなに人気があるとか、食べログで点数が高いことが安心材料であり、評価ポイントになるのです。

発想力がある人が企画職に向くとは限らない

―― 社内で、上の世代の上司や男性と話がかみ合わない、どうコミュニケーションを取っていいか分からないという声もしばしば聞きます。FFS理論でみると、年齢や性別で傾向の違いはありますか?

古野 この年齢に多いタイプとか、男性に多いタイプとか、年齢や性差による偏りはほぼありません。微妙な男女差はありますが、約10万人の平均データで0.7ポイントの差ですから、1000人の会社の中で見たらほぼ同じ。大きいのは個人差です。

―― では、持っている因子によって、向く職種や業種はどうでしょう? 自由な発想の「拡散性」タイプなら、いかにも企画や商品開発部門などに向きそうです。

古野 職種についても、傾向はあるものの限定的です。厳密にいうと、介護職や看護の仕事を選んでいる人は、平均値に対して2~3ポイント「受容性」が高い。でも、それは向いているからというよりも、結果的に「受容性」の高い人がその仕事を選んだということだけです。

 それに、発想力が高いからといって企画職に向くとは一概に言えませんね。企画職として求められる資質が、業種や会社の規模、市場をつくるのか取りに行くのかによっても違いますから。

 世の中にない商品を売るプロモーションであれば「拡散性」の高い人が向くが、リニューアルでシェアを取りにいくのであれば「保全性」とか「受容性」の高い人、他社商品など市場を分析するなら「弁別性」が向く。

 一つの商品を売り出す間にも、細分化した要望やニーズがあり、全方位でできる人はいません。だから、企画であろうが、マーケであろうが、いろいろな因子の人がいたほうがいいのです。