組織の中で、「あの人はなぜ、いつもあんな行動をとるのだろう」「なぜか、自分の言葉が誤解されてしまった」……そんな気まずさやモヤモヤを感じている人も少なくないはず。こうした擦れ違いを生むことなく、さらにチーム力と生産性を高める方法として、多くの企業が導入している「FFS理論」。『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み』(日経BP)の著者で、数万人の個性を分析し、チームビルディングに生かしてきた古野俊幸さんに話を聞いた。

(上) 宇宙兄弟の登場キャラに学ぶ「自分の強み」の生かし方
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FFS理論とは、Five Factors and Stressの頭文字を取ったもの。同じ環境でも心地よいと感じる人もいれば、不安に感じる人もいる。その感じ方や捉え方の特性を5つの因子として計量化。思考行動パターンの5つの因子は、凝縮性、受容性、弁別性、拡散性、保全性詳しい5つの因子の特徴は、■5つの因子の主な特徴

「憧れのタイプ」にはならなくていい

―― 「宇宙兄弟の登場キャラに学ぶ『自分の強み』の生かし方」の記事では、FFS理論の5つの因子とそれぞれの特性、強みについて伺いました。例えば、慎重で踏み出すのが苦手な「保全性」タイプの人が、物事を合理的に考えられる「弁別性」タイプや興味のまま行動を起こせる「拡散性」に憧れることもあるかもしれません。経験を積んでいくことで自分の因子を変えていくことはできますか?

古野 変わることはありません。因子は、その人が持っている考え方の癖です。左利きの人が、大人になってから変えようとしても難しいでしょう。それよりも左利きのよさを生かしたほうがいい。それと同じです。変わらないと受け入れた上で、特性を生かせばいいのです。

 そのために必要なことは、自己理解です。5つの因子はどの人の中にも存在しますが、FFS理論では数値の高さと組み合わせで見ていきます。

 例えば、「凝縮性」の高い人は決断力があり、「受容性」の高い人は面倒見のよさと丁寧さが強み。「拡散性」の高い人は推進力があり、「保全性」の高い人は仕組み化や安定的な運用が得意です。一人で成功する人はいません。どれがよくてどれが悪いというわけではない。

 知識や経験がたくさんあるにもかかわらず、悩んでいる人にもたくさん会いました。でもそうした人は、実は自己理解が不十分なのかもしれません。「自分はこうありたい」という憧れで自分自身の強みに目を向けず、自分の個性に合わないやり方で無理をしている人も少なくありません。

 まずは「自己理解」を深め、自分の持っている強みを磨き、弱みは仲間と補い合えばいいのです。