初めて体感する、光のない日常

 映画『きみの瞳(め)が問いかけている』は、不慮の事故で視力と家族を失った柏木明香里(吉高由里子)と、キックボクサーだったが、とある事件がきっかけで未来を絶たれてしまった篠崎塁(横浜流星)の切ない純愛ストーリー。愛する人の幸せだけをただひたむきに願う不器用な二人を描いた作品だ。

 この映画で、五感の一つ「視力」を失う女性を演じた吉高さん。30代の今だからこそ挑戦してみたい、と踏み切ったそう。撮影ではどんな役作りをし、どんな心境だったのだろうか。

 「撮影前に全盲の方と会い、話しているときの表情や、瞳の動かし方などを学ばせてもらいました。普段私たちは、物を直視していなくてもつかむことができる。それは、視界に入っているだけで『そこに物がある』と認識できているからつかめるんだと、改めて気づかされました」

「30代の今だからこそ、この役を演じられてよかった」(吉高さん)
「30代の今だからこそ、この役を演じられてよかった」(吉高さん)

 「ほかにも、家の明かりを消して歩いたり、料理をしたりしました。包丁って、目が見えていても刃先が怖いじゃないですか。見えない状態ではキュウリ1本切るのすら、怖かった。フライパンが温まったかどうかの確認は、フライパンの端に素手で触れてみる。油の量も、自分の指で測って確認する……。見えない人の日常を初めて体感してみて、どのように工夫されているかが分かりました」