吉高由里子 3つのセオリー

 テレビのバラエティー番組などで目にする吉高さんは、いつも明るく天真爛漫(らんまん)な人に見える。この日のインタビューも、吉高さんの発言でその場は和やかな雰囲気だった。けれど、実は「撮影前はナーバスになる」のだとか。そんな吉高さんの、仕事や自らに対するセオリーを聞いた。

1.ありのままの自分を、受け入れる

 「撮影の2週間くらい前から、ずっと気持ちがナーバスです。始まってしまえば終わりを目指していくしかないので現場を楽しめるんですけどね。

 それは、『役が自分とフィットするか?』『ワクワクしながら撮影に挑めるか?』『撮影現場はどんな雰囲気か?』……と理由はさまざま。不安のほうが、少し大きいんですよね」

 その不安は、演技の回数や年を重ねていけば自然と慣れて解消できるはずだと思っていたんだそう。

 「でも、ちっとも慣れなかった(笑)。そこで、『これはもう、ナーバスになる自分を受け入れるしかない』と気づきました。不安になる自分を許してあげるしかないんだな、と。人ってなかなか変わらないものなんです(笑)

「インタビュー取材のような少人数のときは大丈夫ですが、撮影前の顔合わせでは大人数の前で台本を読むため、すごく緊張して人見知りしてしまいますね」
「インタビュー取材のような少人数のときは大丈夫ですが、撮影前の顔合わせでは大人数の前で台本を読むため、すごく緊張して人見知りしてしまいますね」

2.発信するときに気を配る

 「思っている以上に、自分の発言の影響力が大きいのだと痛感します。発信する場所が大きければ大きいほど、世界中のさまざまな人につながってしまう。

 それはもちろん、良い面もたくさんあります。けれど、SNSでは言葉に気をつけないと、誤解されたままものすごい速さで広がっていってしまうと知っているから、常に気を配るようにしています

3.無理に変わろうとしなくても、いい

 取材の数週間前、誕生日を迎えていた吉高さん。30代の今、「20代だった頃の自分に言いたいこと」は何なのだろうか。

 「『人ってなかなか変わらないよ』と言いたいですね。

 20代の頃は、30代はもっと『大人』だと思っていました。けれど、今もまだ20代の頃の感覚でいるし、発言している内容も同じ。

 取材で、『○年前はこう言っていたけれど、今はどう思いますか?』とよく聞かれるのですが、いつも同じ回答をしていると気づきました(笑)。逆に、こうして声に出しているから頭が覚えていて、いつも変わらない発言をしているのかもしれないんですけれど。

 もちろん、『人はいつだって変われる!』と強いマインドを持っている人もいると思います。けれど、女優を何年続けても撮影前には毎回不安になってしまうように、私は全然変わらない人間。でも、無理に変わろうとしなくても、いいかな

取材中、吉高さんは筆者にも気配りをしてくれて、場の雰囲気を明るく和ませてくれました
取材中、吉高さんは筆者にも気配りをしてくれて、場の雰囲気を明るく和ませてくれました

 いつまでも変わらない自分に対して、「ほんと、人間って未知すぎて分からないですね」と明るく笑った吉高さん。一本芯の通った彼女の変わらなさの理由は、「自分を受け入れた」からなのかもしれない。

 筆者も、「変われない」と自分に対して落ち込むときがある。だからこそ、吉高さんの言葉が強く胸に響いた。これからは、自分を受け入れて生きていこう。きっとまた落ち込む時もあるけれど、そんな時は、彼女の言葉を思い出したい。

取材・文/尾崎悠子(日経doors編集部) 写真/稲垣純也 ヘアメイク/RYO スタイリスト/DAISUKE FUJIMOTO(tas)

映画『きみの瞳(め)が問いかけている』は、10月15日(木)先行上映、10月23日(金)全国公開。