芸能ニュースばかりで情報に偏り

―― 欧米では昨夏から気候変動への対策を求めるために大学生や高校生が授業をボイコットする「学校ストライキ」が続き、国連気候行動サミットに先立つ9月20日には、世界で400万人がデモに参加したそうです。一方では、日本ではその動きはあまり広がっていません。なぜなのでしょうか。

山本 日ごろから環境問題にどの程度意識を持っているかが関係していると思います。例えば、欧州では以前から環境に関心が高く、プラスチックの使用を減らしたり、ビーガンやベジタリアンという食を通した環境活動に参加している人も増えているようです。大学内でも常に環境に関する議題が出され、影響力がある著名人も「エコ」「サステナビリティー」に取り組んでいます。だからこそ、多くの人がその緊急性を肌で感じていると思っています。

 一方、日本は情報に偏りがあるのではないでしょうか。言語の壁があるので世界の動きをすぐにキャッチしづらい。メディアは、政治や社会問題よりも芸能ニュースに焦点を置いているので、環境について考える機会が少ない。

「日本の教育システムでは生徒たちが自分から情報を探しに行かないし、状況や物事を疑うことを覚えない」
「日本の教育システムでは生徒たちが自分から情報を探しに行かないし、状況や物事を疑うことを覚えない」

 それに日本では自分たちで環境問題に立ち向かわず、誰かに「処理」をしてもらい続けているので、どこか他人事なのかもしれません。不要なプラスチックゴミはお金を払って他国に処理を依頼しています。

 教育も原因だと思います。日本では「意見を持つ」教育はしない。政治に関しての議論や社会問題についてディベートもしない。「教壇の上に立つ先生の言うことを聞く」日本の教育システムは、トップダウンすぎて、生徒たちが自分から情報を探しに行かないし、状況や物事を疑うことを覚えない。

―― 同じアクティビストとして、グレタさんの行動で感心するところや学ぶところはありましたか?

山本 何よりもグレタさんの真っすぐな心に感心しました。自分もくじけそうになったり、諦めたくなったりすることもあります。それに私自身も、いろいろな課題に麻痺し始めていると思っています。けれど、グレタさん相手を問わずにどんどん発言している。その姿勢、心強さから学び、自分も活動を続けたいと思っています。

山本和奈(やまもとかずな)
山本和奈(やまもとかずな) 国際NGO団体「Educate For」、人々が声をあげやすい社会を目指すための団体「Voice Up Japan」を立ち上げた。南米に移住し、各地で教育格差をなくすための活動や女性の人権を守る活動をしている

構成/飯泉 梓(日経doors編集部) 写真/花井智子