スウェーデンの環境活動家で16歳のグレタ・トゥーンベリさんは9月23日、米ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットに出席し、「How dare you!」(よくもそんなことを!)という表現を繰り返し用いて、各国の首脳らに温暖化対策の行動に出るよう強く訴えました。それを受けて、『週刊SPA!』の「ヤレる女子大学生RANKING」企画に抗議したり、性犯罪の刑法改正を求めて署名を立ち上げたりとアクティビストとして活動する山本和奈さんが、日経doorsにメッセージを寄せてくれました。

子どもに「ごめんね」は言いたくない

日経doors編集部(以下、――) 世界中の若者を巻き込んだストライキ運動を率いたグレタさんの国連でのスピーチが大変話題になっています。同じアクティビストとして、山本さんは何を思いましたか? 特に印象に残ったセリフはどんな部分ですか?

山本和奈さん(以下、山本) 私が印象に残ったのは以下の2つです。

You say you hear us and that you understand the urgency. But no matter how sad and angry I am, I do not want to believe that. Because if you really understood the situation and still kept on failing to act, then you would be evil. And that I refuse to believe.

あなたたちは、私たちの声を聞いていると言っています。事態の緊急性を理解していると言っています。どんなに悲しくても、怒りを抱いていてもその声を信じたくありません。

だって、本当に事態を理解していながら、何もしないのであれば、ただの悪じゃないですか。だから、それ(その言葉)を信じたくありません。

それから

You are failing us. But the young people are starting to understand your betrayal. The eyes of all future generations are upon you. And if you choose to fail us, I say: We will never forgive you.

私たちは失望しています。そして私たち、若い世代はあなたたちの裏切りに気付き始めています。未来の世代は、みんなあなたたちを見ています。もし、私たちを失望させ続けるのであれば、私たちはあなたたちを信じません。

 この言葉はとても深く感じました。環境がどんどん壊されています。世界の「肺」と言われているアマゾンの熱帯雨林では、ここ数年で大きな火災が何度も起きている。それにマイクロプラスチックが既に北極や南極にでも見つかっている。それなのに、各国の意思決定の場にいる人は何をしているのか。

 大げさかもしれませんが、お金や権力を持っている人は「火星に逃げればいい」ぐらいのマインドセットでいるんだと思います。もし水が汚染されれば、汚染水はお金を持っていない人に処理させ、自分たちはお金できれいな水を買えばいいと。

 この社会や世界にある格差は、ここまで来てしまった、と今まで以上に感じました。

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさん。米ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットに出席し、地球温暖化に本気で取り組んでいない大人たちを叱責した。写真:AP/アフロ
スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさん。米ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットに出席し、地球温暖化に本気で取り組んでいない大人たちを叱責した。写真:AP/アフロ

 また、グレタさんの「大人に失望した」という言葉にとても共感しました。私自身、ジェンダーの問題に関わっていると、いろいろな大人に「私たちもなんとかすればよかった」と言われます。けれど、彼らは変えることはしなかった。だから、何十年経った今も同じ問題と戦っている。

 「ごめんね」とは誰でも言える言葉です。けれどそれは、「何もしなくてごめんね」という意味で、私はそんなことを言いたくない。自分の子供に、自分の後輩に、「同じ問題が続いてごめんね。この大きな問題を、あなたたちに背負わせてごめんね」とは言いたくない。

 絶対に、自分たちの世代で終わらせたい。

 マイクロプラスチックなどの環境問題も、格差の問題も、貧困も、性暴力も、性による賃金差も、全部自分たちの世代で解決して、前に進みたい。それをグレタさんのスピーチを聞き、強く思いました。