最近、仕事に燃えているだろうか? 「問題が山積みで疲労感しかない」「こんな職場で自分にできることなど何もない」――。そんな気持ちに陥っているビジネスパーソンにこそ見てほしいのが、2020年10月16日から公開中の映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』だ。中でも「理想的な上司」として学ぶ点が多いのが、登場する人気キャラクターの一人、煉獄杏寿郎。キャリアコンサルタントの岩橋ひかりさんに、その魅力をひもといてもらった。

※閲覧環境によって、文中の一部で正式な漢字が表示されない場合がある。煉獄の「煉」は正しくは「火」ヘンに「東」、禰豆子の「禰」は正しくは「ネ」ヘンに「爾」

 週刊少年ジャンプで2016年から約4年3カ月にわたり連載された漫画『鬼滅の刃』。19年にテレビアニメ化され、コミックス(1~22巻)のシリーズ累計発行部数は1億部を突破している。

 物語の舞台は大正時代の日本。主人公の少年・竈門炭治郎(かまど たんじろう)は、鬼に大切な家族を惨殺され、唯一生き残った妹の禰豆子(ねずこ)も鬼にされてしまうという悲劇に見舞われる。炭治郎は妹を人間に戻すため、鬼を討伐する組織「鬼殺隊」への入隊を志願。個性豊かな仲間と共に、いくつもの死闘を乗り越えていくというのがあらすじだ。

 今回の映画で、主人公たちと共に鬼に立ち向かうのが、煉獄杏寿郎(れんごく きょうじゅろう)という人物。階級制をとる「鬼殺隊」で屈指の強さを誇り、最高位の「柱」と呼ばれる剣士の一人だ。

鬼殺隊の「柱」として屈指の強さを誇る、煉獄 (c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
鬼殺隊の「柱」として屈指の強さを誇る、煉獄 (c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 キャリアコンサルティングなどを手がける「MYコンパス」代表の岩橋ひかりさんは、煉獄の人物像について「『人を率いる立場にある者ならこうあってほしい』という理想を体現している」と評価する。

 「『鬼滅の刃』が子どもたちだけでなく、多くのビジネスパーソンからも人気を集めている要因の一つには、鬼殺隊という組織自体を『会社』と重ね合わせやすいことがあると思います。能力と経験に基づいた序列がありながら、同時にそれぞれの個性も尊重されている。『鬼を倒す』というシンプルな目標は、自分たちの生きる世界を守ることにつながっていて、おのおのがそれに向かって真摯に努力を重ねている。現実の職場では、チームで志が共有できていない例も少なくありませんから、ある種、理想の組織として鬼殺隊に憧れる気持ちがあるのではないでしょうか」(岩橋さん)

 そんな組織の中にあって、なぜ煉獄は優れた「上司」であるといえるのか。岩橋さんは、次のような特徴を挙げる。次ページから、詳しく説明していこう。

■「理想の上司」煉獄杏寿郎 3つの特徴
(1)危機的な状況でも、笑顔。明るさと優しさで的確に部下を導く

(2)圧倒的な強さは、経験と鍛錬のたまもの。だが「俺のようになれ」とは言わない

(3)「こうあるべきだ」という強い信念に基づいて行動する。一方で、物事をフェアな視点で観察し、時には自分の考えを改める柔軟さも併せ持つ

※2ページ目以降は一部、台詞など映画の内容に関わる情報を含みます。