自分の強みのビジネスをアートに結びつける

── 寺瀬さんが現代アートの世界で大きな成功を収められたのは、モルガン時代の経験も大きく影響していそうですね。

寺瀬 まさにその通りです。自分の強みであるビジネスとアートを結びつけるような仕事をしたいと、当初から思っていました。

 10年前、私がサザビーズに入社した頃は、特に日本ではアートシーンをお金の観点から語るのはタブーという雰囲気でした。一方で、既に海外ではアートは投資対象になりうるという評価を確立していて、パブロ・ピカソの絵が何百億円で売れたというニュースが「フィナンシャル・タイムズ」や「ウォール・ストリートジャーナル」の一面を飾っていました。

 サザビーズのようなオークション会社は、アートと経済を直接的に結びつけるポジションなので、自分の強みを発揮しやすい環境で働けたと思います。クライアントにも、バンカー出身という私の異色な経歴は結果的に好意的に捉えられることが多かったですね。もちろん作品の価値を見極める審美眼があるのは大前提で、その上でさらに作品の将来的な資産価値を投資的側面からアドバイスできる存在として重宝がられました。

 特にこの4、5年、アートマーケット全体がそういった投資的観点からのアドバイスを重視するように急激に変化したことは、私にとって追い風だったと思います。最初に日本での実績が認められ、アジアマーケットへ。さらにアジア全体を見る責任者へとステップアップできました。

さまざまな企画でアート業界に新風を巻き起こし、「現代アートのことならYukiに聞け」と言われるほどのインフルエンサーに
さまざまな企画でアート業界に新風を巻き起こし、「現代アートのことならYukiに聞け」と言われるほどのインフルエンサーに