500人の住民が物々交換

 既に、シェアで生活や経済が循環している自治体も誕生しています。たとえばそれが相模原市の藤野という地域です。ここでは、約500人が登録するメーリングリストがあり、その中ではモノの貸し借り情報や「車で送っていってほしい」といった依頼がやり取りされています。この活動には、日本で昔からある、ご近所でモノを貸し借りする習慣がベースにあります。こういうやり取りがより活発になれば、1年に1度しか使わないような商品を買う必要もなくなりますし、何より母親が一人で育児を抱え込んでしまったり、高齢者が孤独死をしたりという事態は避けられるのではないかと思います

 藤野の取り組みのように、日本では今、シェアが広がるインフラが新しい形で整いつつあります。シェアはかつて江戸時代の長屋の文化や、まだ地方に残る模合(もあい、沖縄などで行われていて、個人や法人がグループを組織して一定額の金銭を払い込み、定期的に1人ずつ順番に金銭の給付を受け取る金融システムの一形態)や結(ゆい、小さな集落や自治単位における共同作業の制度)の文化のように、日本が昔から持っている文化や価値観と親和性が高いと思っています。そういう意味では価値観として受け入れやすいのかもしれません。

 日本に根付いている東洋思想の根底にあるのは、「ともに生きている」という共生意識。自然も個人同士もすべてもともとつながっているという考え方。この「すべてつながっている」という考えがあると、さまざまなモノをシェアする価値観にシフトしやすいかもれません。

 日本のシェアリングエコノミーサービスは、スタートしたばかり。世界各国でも様々なシェアが広がっています。次回は世界を旅して目にしたシェアライフについてご紹介します。

取材・文/川辺美希 写真/鈴木愛子、PIXTA