アクティビストとして活動する山本和奈さんは、活動拠点を南米に置き、声を上げたくても上げられなかった人の代弁をするべく活動を続けています。そんな山本さんが「ここ、ちょっと、おかしい」と思うことについて、鋭い視点から指摘してくれます。最終回の今回は「自分の生き方」についてです。

 Happiness That Matters――これは南米をバックパックしていた20歳のとき、始めたフォトプロジェクトの名前だ。

 チリのパタゴニアやペルーのマチュピチュ、ボリビアのウユニ塩湖に足を運びながら行く先々に会った現地の人や旅人に「What is Happiness to you? 」(あなたにとって幸せとはなんですか?)と聞きながら、その人の笑顔の写真を撮った

南米をバックパックしていたときに「あなたにとって幸せとはなんですか」と聞きながら、笑顔の写真を撮っていった
南米をバックパックしていたときに「あなたにとって幸せとはなんですか」と聞きながら、笑顔の写真を撮っていった

 このプロジェクトを始めたきっかけ、私が気づいた「幸せ」について、話をしたい。

多くの人の死ぬ瞬間の後悔

 私は大学2年生のとき、国際基督教大学(ICU)で社会学の授業を受講した。そのときに尊敬する教授が紹介したある本がこのプロジェクトを始める要因となった。

 『The Top Five Regrets of the Dying』――死ぬ瞬間の5つの後悔。オーストラリア出身のブロニー・ウェアという長年暖和ケアの介護を務め、多くの人の最期をみとった女性が聞いた皆に共通する後悔を書いたものだ。

 その5つ目に書かれている後悔が「I wish that I had let myself be happier」「もっと幸せになればよかった」との言葉だ。

 そしてその本を紹介した後に教授が「今日、帰ったらこの5つのことを大事な人に共有してください」と言った言葉が胸に刺さった。

 大学2年生の自分は、「就活どうしよう」「今後のキャリア」「ライフプラン」に頭を抱え、「良い人生を生きるためにどうすればいいのか」ということをただひたすら考えていた。自分の「やりたいこと」よりも履歴書に何を書けばいいか、どうしたら大企業に就職できるかぐらいしか考えていなかった。

 「後悔しないように生きる」、それはいつも自分自身に言い聞かせている言葉。どんなに自分の目標を達成しても、死ぬ直前に「幸せになればよかった」と後悔したら意味がないのではないか、と思うようになった。