今年2月1日、ミャンマー国軍がクーデターを起こして、ウィン・ミン大統領やアウン・サン・スー・チー国家顧問らが身柄を拘束されました。今月3日には、抗議デモで少なくとも38人が死亡して国連が「最悪の流血」※1と表現するなど、情勢は悪化しています。同国で何が起きているのか、なぜミャンマー情勢に注目すべきなのかについて、「イシケンTV-ニュース解説 by The HEADLINE」「The HEADLINE」編集長の石田健(通称・イシケン)さんが解説します。※1は記事末を参照

何が起きた?

 今回のクーデターによって、アウン・サン・スー・チー氏による政権は転覆し、国軍が政権を掌握しました。同国では、1962年に起きた軍事クーデターから軍事政権が続いていましたが、2010年にアウン・サン・スー・チー氏が軟禁から解放されたことで、政治に復帰。2011年には民主主義政権への移管(民政移管)が実現しました。

 アウン・サン・スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)は、2015年の選挙で大勝利を収めて、そこから5年間にわたって与党として国民から強い支持を得てきました。2020年11月の総選挙でも、NLDが5年前の選挙から議席を増やして、改選議席476議席のうち8割以上を占める圧勝を収めました。

 一方で民政移管後も、国軍は強い権力を維持してきました。例えば、内務省・国防省・国境省の閣僚、そして議会議席の25%はあらかじめ国軍に割り当てられることが決まっています。また、アウン・サン・スー・チー氏を念頭に置いて、夫、子どもが外国籍の場合は大統領への就任が禁じられ、同氏は国家顧問という役職によって党を指導することを余儀なくされていました。

 こうした状況の中で、なぜ今になって国軍がクーデターを起こしたかは分かっていない部分もありますが、国軍は2020年11月の選挙で不正があったと主張しています。しかし不正を裏付ける証拠はなく※2大敗を喫した国軍側でNLDおよびアウン・サン・スー・チー氏の影響力拡大を警戒したのではないかとみられています※3 クーデターが実行された2月1日は、総選挙後初となる議会が予定されており、国軍が議会開始前に行動を起こしたかったことが分かります。※2、3は記事末を参照

 ではミャンマーの問題について、なぜ私たち(この記事を読んでくださっているのは日本に住む、日本語話者の方が多いはずです)が注目すべきなのでしょうか? 3つの理由から見ていきましょう。