注目すべきは菅政権独自の手腕

 菅首相は、人事や予算を通じて官僚をコントロールする政治手法を取ったといわれます。これは安倍政権から続く「官邸(政治)主導」という考え方であり、「決められない政治」を脱却して、政治家(=首相)の決断力によって物事を前に進めていく手法として、肯定的に捉えられることもあります。しかし、森友・加計問題などを通じて、政治家の力が強くなりすぎることに国民の不信感が高まったことも事実です。

 任命拒否の問題は、菅政権にとっては「既得権益との戦い」や「前例主義の打破」に位置づけられるのかもしれませんが、国民は「官邸主導」のネガティブな側面として受け取る可能性もあります。菅首相が、こうした点も安倍路線を継承しているというイメージが強まれば、支持率に影響を及ぼすかもしれません。※9

 以上3つのポイントから分かるように、始まったばかりの菅政権の評価を今の時点で確立させるのは難しいでしょう。ただ、良くも悪くも安倍政権の継承というイメージからいち早く脱却し、今後難しくなるであろうコロナ対策や経済対策で、独自の手腕を振るえるかが注目すべき点になっていきそうです。

 一般的に政権発足当時は、ご祝儀的な意味合いでも支持率が高まるといわれています。2020年の秋から冬にかけて、政権への評価が本格的に定まってくるはずです。※8,9は記事末を参照

文/石田健

【参考】


※1 JNN世論調査
※2 Bloomberg 辞任表明の安倍内閣が支持率急上昇、自民党に早期解散論も
※3 朝日新聞デジタル 安倍政権を「評価する」が71% 朝日新聞世論調査
※4 毎日新聞 菅内閣支持率64% 第2次安倍内閣発足時上回る 毎日新聞世論調査
※5 NHK 菅内閣「支持する」62% 発足時で小泉・鳩山内閣に次ぐ水準
※6 朝日新聞デジタル 内閣支持率29%、発足以来最低に 朝日新聞世論調査
※7 たとえば毎日新聞(安倍政権の新型コロナ対応「評価しない」47% 外交経済は評価 毎日新聞世論調査)や朝日新聞(脚注3)など
※8 前掲、JNN世論調査
※9 実際に、12日のNHKによる世論調査(菅内閣を「支持」 先月より7ポイント下がり55% NHK世論調査)では、支持率が55%まで低下しています。ご祝儀支持の終了なのか、学術会議問題への懸念なのかは不明ですが、今後の動きを中止する必要があります。