2020年11月8日(現地時間7日)、米国大統領選での勝利を受けて、民主党のジョー・バイデン前副大統領による勝利宣言が行われました。トランプ大統領は敗北を認めておらず、選挙の正当性について法的に争う姿勢も見せていますが、菅首相をはじめとする世界の首脳は、次々とバイデン氏への祝辞を送っています。トランプ大統領の言動には世界中が右往左往しましたが、バイデン氏が大統領になることで、いったい何が起こるのでしょうか。日本への影響について、いくつかのポイントから見ていきましょう。本連載でおなじみのイシケンさんが解説します。

政府の見方

 トランプ大統領といえば、安倍前首相と「ドナルド」「シンゾー」と呼び合う仲で知られ、日米関係は世界でもまれに見るほど良好でした。そのトランプ大統領がいなくなり、あまり外交が得意ではない菅首相が就任したことで※1、今後の日米関係に不安を覚える人もいるかもしれません。

 しかし日本政府は、バイデン大統領の誕生を「冷静に受け止める声が大勢」だといわれます。※2これは、バイデン有利の事前予想があったことも理由ですが、誰が両国のリーダーになっても、粘り強く外交交渉を続ける必要性は変わらないからだと言えます。

 政府や産業界のリーダーは、バイデン大統領の影響を冷静に見極めようとしていますが、基本的には、世界情勢や日本への影響が急速に変化することはないでしょう。

経済やビジネスの影響

 具体的に、経済やビジネスにおける影響はどうでしょうか。民主党はこれまで、クリーンエネルギーやハイテクノロジー分野への投資を鮮明にしてきたので、世界的にこうした分野が盛り上がる可能性があります。

 また合わせて注目したいのが、製造業です。実は、バイデン氏の政策には「made in all of America(すべてを米国製に)」というメッセージ※3が打ち出されています。これはトランプ大統領の「America First(米国第一)」のような、自国第一主義を感じさせるキャッチコピーです。トランプ大統領のように、突発的に強硬な関税交渉が始まることはないでしょうが、日本の動向に詳しい専門家を通じて、緻密な交渉を持ちかけてくる可能性があります。民主党の貿易交渉は、共和党よりも厳しいという指摘もあります。※4

 もう1つは、議会の動向です。バイデン氏は、大企業や富裕層への課税強化などを目指していますが、共和党が上院議席の過半数を確保する見通しが強まる中で※5、日本でいう「ねじれ国会」のような状況が起きれば、さまざまな政策が停滞する可能性があります。こうした状況は、為替や株価に影響を与える可能性があるため、日本にも関係してきます。※注釈は記事末を参照

[イシケン’s EYE]
一部報道で、トランプ大統領が4年後の再出馬を目指しているといわれています。事実ならば次の任期を諦めて敗北を認めたことになりますが、もしバイデン次期大統領が議会のねじれなどで十分な成果を上げられなければ、トランプ大統領の復活は、決して非現実的な話でもありません。