偶然をマネジメントする

 アントレプレナーシップ(起業家精神)の分野では、エフェクチュエーションという、起業家ならではの考え方が注目されています。そのエフェクチュエーションの中に「許容可能な損失」というものがあります。優秀な起業家は、リターンの最大値を考えて行動するのではなく、自分の中で許容可能な損失を計算して、その範囲内で挑戦する、というのです。そうして不確実性に対処するのが起業家です。

 私たちは、自身のキャリア構築の中でアントレプレナーシップを発揮しなければいけないときがあります。そんなとき、こうした許容可能な損失を考えてみると、不確実性や偶然をうまくマネジメントできるかもしれません。

 こうしたマネジメントのすべを知っておけば、不確実性を必要以上に恐れる必要はなくなります。そして、冒頭で紹介したような積極的不確実性という立場を取りやすくなり、不確実性や偶然を前向きに捉えられるようになるのではないでしょうか。

 私たちは偶然というと、悪い偶然を思い浮かべがちです。もちろん悪い偶然もありますが、良い偶然もあるものです。知らなかったことを学ぶのも、良い偶然のひとつです。この記事で新しい概念を学べた人がいたのであれば、それもひとつの良い偶然と言えるでしょう。

 私個人としては、悪い偶然があることも踏まえたうえで偶然性をうまくマネジメントし、ちょっとした良い偶然を日々楽しめていければなと思いながら過ごしています。こうしたスタンスが少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

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今回の人脈術骨子

 キャリアにおいて、「探索」を続けることは成功への近道である。探索に時間とリソースをあて、その結果に対する評価基準も変えていくことが重要。また挑戦に不確実性はつきものだが、起業家は「許容可能な損失内」で挑戦している。いざというときのセーフティーネットを確保しておくことが、偶然性に対して前向きに対処するすべにもなる。

文/馬田隆明 イメージカット/PIXTA