自分のキャリアを形成していく上で、ビジネススキルの向上より大切なもの、それが「人脈」です。コミュニケーションに自信がない内向的な人でも始められる人脈マネジメント術について、東京大学で教べんをとる馬田隆明さんに教えてもらいます。今回のテーマは「不確実性との付き合い方」です。「今回の人脈術骨子」を記事末にまとめていますので、ぜひ最後までお読みください。

 本連載ではこれまで、人とのつながりがキャリアに前向きな影響を与えること、そしてつながりの作り方についてお伝えしてきました。

 とはいえ、新しいつながりを作ろうとしても、常にうまくいくとは限りません。新しいことに挑戦するときは、どうしても不確実性がつきまとうもの。そこで今回は、そんな「不確実性との付き合い方」についてお話しします。

偶然を活用する「積極的不確実性」とは

 スタンフォード大学の心理学者、ジョン・D・クランボルツ教授によって提唱された「計画的偶発性理論」では、「個人のキャリアの8割は予想されなかった偶発的なことで決まる」と考えられています。このクランボルツの理論を聞いたことがある人もいると思いますが、実はキャリア論にはもう一つ、偶発性が強調された考え方があります。それが同じくスタンフォード大教授のハリィ・ジェラットによる「積極的不確実性」です。

 ジェラットは、変化が激しく、未来が予測できない時代には、合理的な考え方だけでは不十分である、という立場を取ります。なぜなら、合理的思考によって導き出した答えや道があったとしても、その前提が崩れてしまえば正解ではなくなるかもしれないからです。

 だからこそ、ジェラットは合理的に思考しつつも直観的な視点を取り入れること、柔軟であり続けることの大切さを訴えています。そうした、不確実性をむしろ積極的に受け入れることによって、新しい意思決定をしていこう、という考え方が「積極的不確実性」です。

 「積極的不確実性」の考え方に立てば、降ってきた偶発的な出来事を生かすだけではなく、偶発的なことが起こりうる不確実な状況を活用していくという態度が重要になります。これは人脈作り(ネットワーキング)でも同様のことが言えるのではないでしょうか。

 私たちは、不確実な状況を避けてしまいがちです。しかしその良い面を見て、不確実性をうまく生かすことで、私たちはより多くのものを得られるのではないでしょうか。今回は、偶然性をうまくマネジメントしていく術を身に付ける、そのヒントを提供したいと思います。