自分のキャリアを形成していく上で、ビジネススキルの向上より大切なもの、それが「人脈」です。コミュニケーションに自信がない内向的な人でも始められる人脈マネジメント術について、東京大学で教べんをとる馬田隆明さんに教えてもらいます。最終回のテーマは「情熱の育て方」です。

情熱は「見つける」のではなく、「育て」よう

 仕事や趣味における「やりたいことが見つからない」という言葉は、年代を問わずしばしば聞かれます。そうした言葉の裏には、情熱とは「見つけるもの」という前提があるようです。情熱を傾けられるものを見つけることができれば、まるで物語の一目ぼれのように、恋に落ちるのだと。

 もちろん、そうしたこともあるでしょう。しかし私は、情熱は育むことができる、という考え方を持つことをお勧めしています。

 例えば、アメリカの心理学者キャロル・ドウェックは、「情熱が見つかれば無限のモチベーションが生まれてくる」と信じているような人たちは、困難を予測しない傾向にあり、実際に困難が起こってしまうと興味を失ってしまいがちである、と指摘しています。また、そうした人たちは自分の興味関心以外の領域については、オープンではない傾向にあるそうです。

 どうやら人は「自分にピッタリと合う(情熱を傾けられる)何かがあるはずだ」という思い込みによって、探索の幅を狭めてしまうようです。「探索」の重要性は本連載の第4回(優秀な起業家に学ぶ偶然と不確実性のマネジメント術)でも触れましたが、探し物の多くは、探さなければ見つかりません

 恋に落ちるように得た、燃え盛るような情熱と、徐々に育てた情熱とでは、得られる成果が違うのでは、と思う人もいるかもしれません。しかしシンガポール国立大学のパトリシア・チェンらの研究によれば、どちらであろうと同じような成果や情熱を持てることが指摘されています。