自分のキャリアを形成していく上で、ビジネススキルの向上より大切なもの、それが「人脈」です。コミュニケーション力に自信がない内向的な人でも始められる人脈マネジメント術について、東京大学で教べんをとる馬田隆明さんに教えてもらいます。

人的ネットワークはキャリアをよりしなやかにしてくれる

 日経doors読者の皆さん、初めまして。東京大学で起業家の支援などをしている馬田隆明です。現在私は、東大生がプロダクト開発を行う「本郷テックガレージ」の運営と、東大卒業生、現役生、研究生のスタートアップを支援する「FoundX」のディレクターを務めています。週に1回、東大で講義も行っています。

 常々、日本の働く女性に対する評価や環境は不十分であると考えてきました。この連載では、そんな中で奮闘する女性読者の皆さんがこれからのキャリアを考える手助けをできればと思っています。

 キャリアに関する本を読むと、多くの場合、自分自身でキャリアデザインしながら、いかに自分の能力(スキル)を伸ばしていくかということに主眼が置かれています。その前提にあるのは、「キャリアはデザインできる」ということと、「自分の能力を伸ばすことがキャリア開発につながる」という考え方です。

 今後のキャリアを考える上で、確かに自分でデザインすることも、自分自身の能力を伸ばすことも大切です。しかしこの連載では、そうしたビジネススキルに加えて、「ネットワークを作ることがキャリアをよりしなやかにしていく」ことをお伝えしたいと考えています。言い換えれば、個人の持つヒューマンキャピタルに着目したキャリアデザインではなく、ソーシャルキャピタルに寄った視点でのキャリアデザインについて、読者の皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

 とはいえ、「人脈」や「ネットワーク」と聞くと、近寄りがたいもののように思われるかもしれません。私自身、どちらかといえば内向的な人間であり、そうしたことからは距離を置いてきました。それに人脈と言ってしまうと、他人をまるで自分のための道具のように扱うことに思えて嫌だ、という人も少なくないのではないでしょうか。

 この連載は、そうした少し内向的な人たちに向けて語りかけていくものです。そして、今はまだ何がしたいか、自分でも分かっていないため、キャリアデザインをしようとすると途方に暮れてしまうような方々向けの情報を提供していきます。