内情を話すと、私が心を決める前から、会社の皆は「新ブランドをやる」という方針を固めて、着々と準備を進めてくれていました。

 ブランドを引っ張るチーフデザイナーの私自身の覚悟が決まらず、揺れていたのです。ひどいときは、感情が爆発して「作る人の気持ち、分かってよ!」と会議室を飛び出したこともあったりして。だいぶ、周りをハラハラさせていたと思う。

 私の揺れが少しずつ振り幅を縮めて、ピタリと軸を定めるまで、待ってくれた仲間たちには感謝しかないです。

わがままは、組織の未来を明るくする

 さっき、「わがままはエゴじゃない」と言ったけれど、それどころか、わがままになることはかえって会社の未来を明るくすると、私は思っています。

 人が夢中になることで生まれるパワーはすごいから。

 私に限らず、一緒に働いてきた仲間が、「自分の力で、絶対にこれをやりたい。やってみせる」とつかめた途端、みるみる輝きを増して、会社を成長させる推進力になっていく姿を、何度も見てきた。

 個人の思いを貫くことと、組織が成長していくことは、同じ延長線上にある。ただし、思いにごまかしや嘘があったら、そうはならない。

 だから、「みんなの意見に合わせる」なんて言わず、もっとわがままになっていい。

 もっと堂々と、身勝手になってみよう。それはあなたのためじゃなく、みんなのためにもきっとなるはずだから。

取材・文/宮本恵理子 写真/竹井俊晴