「やりたいことが分からない」「自由になれと言われると身構える」――気鋭の起業家として注目されているマザーハウス代表取締役兼チーフデザイナーの山口絵理子さんですら、そんな気持ちに共感を覚えるという。「実は、迷ってばかりですよ」という山口さんが、時間がかかっても答えが出なくても、守ってきたこととは?

 やりたいことをやりなさい。

 そう言われた瞬間、キュッと身構えてしまう。そんな人が多いと聞いて、なんだか分かる気がしました。

 私たちは、自分の気持ちに素直になることに全然慣れていない。

 むき出しの、裸の夢をさらけ出すなんて怖い。その前に、自分が本当に何をやりたいかさえ、よく分からない。

 そういう不安や揺らぎを、私も何度も感じてきました。

「むしろ、私は揺れないことがないかもしれません」
「むしろ、私は揺れないことがないかもしれません」

本気で進むために、迷っても守りたいこと

 「マザーハウスを立ち上げた山口絵理子は強い人」。そんなイメージを持たれがちな私だけど、本当はグラグラ迷っている時間のほうが多い。

 さんざん迷う寄り道回り道の先に、ようやく心が決まるときが来る。とにかく時間がかかって、じれったい。

 でも、どんなに時間がかかったとしても、自分の気持ちに一点の曇りなく、「こっちで行く」と信じられる時を待ちたい。 そうじゃないと、本気で突き進めないから。

 納得できないまま、即席の決心を取り繕ったとしたら、もしもうまくいかなかったときに、ネガティブな気持ちしか残らない。

 自分の気持ちに正直にありたい。

 シンプルだけど、ずっと私が守ってきたこと。