今は、新型コロナウイルスの影響で、海外に行くことは難しいかもしれないけれど、「いつかはグローバルで活躍したい」――そんな目標を持っているdoors読者も多いだろう。新型コロナウイルスの感染拡大前まで、世界中を飛び回っていたマザーハウスの山口絵理子さん。起業前から十数年もグローバルな仕事をしているけれど、いまだに海外に行くたび、生まれ変わるような経験をしているというから驚きだ。

 今はすっかりおこもり生活の私だけれど、ほんの3カ月前までは、世界をあくせく飛び回っていた。

 特に昨年は、初めてのヨーロッパ進出、しかもパリという大舞台に挑戦するための本格的な準備に没頭していて、私は「カルチャーショック」のシャワーを全身に浴びていた。

パリで受けた衝撃の一言

 バングラデシュでもネパールでも、インドでも。いつもそうだったけれど、新しい文化に飛び込むたびに、私はまっさらになる。

 大事にしていた価値観や常識をあっさりと覆されて、何度でも生まれ変わる。

 パリでも、私は生まれ変わった。

「パリでも常識ががらりと崩れた瞬間が。あの一言は忘れられません」
「パリでも常識ががらりと崩れた瞬間が。あの一言は忘れられません」

 現地でのリサーチを始めて4カ月ほどたち、パリがすっかり秋色に染まり切った頃、私は現地のキーパーソンと話す機会に恵まれた。

 食事を兼ねての初対面。目の前の二人はずーっとしゃべって止まらない。しかも、お互いに自分の話を一方的にするものだから、会話は全然交わらない。でもまったく気にしていない様子。

 私はニコニコして二人の話をしばらく聞いていたのだけれど、脇のバッグに忍ばせておいたマザーハウスのカタログを、いつ出そうかとモジモジしていた。

 ようやく隙に割り込めて、私がパリに来た理由や目標を伝えることができたのだけれど、話を聞いてくれたおじさまが一言、「絵理子、ここ、パリでは、謙虚さは美しいものではないのだよ」と助言してくれた。