2019年夏、長編小説『夏物語』を上梓した作家の川上未映子さん。08年の芥川賞受賞作『乳と卵』で描いた女性たちが再び登場し、生殖倫理という重いテーマに踏み込んだ。小説を通して産むこと、生きることについて一石を投じる川上未映子さんに、日経xwoman 総編集長の羽生祥子が独占インタビュー。結婚、出産、家族、仕事など女性の「生と性」を激論する。

(1)川上未映子 いつ産む? なんて考える前にする事はある
(2)川上未映子 男性との恋愛を経ないで子どもが欲しい女性
(3)川上未映子 もがきつつ自分への信頼を積み上げた20代
(4)川上未映子 死ぬ直前まで全部見て、書ききりたい ←今回はここ

「年齢は無効」100歳になったらそのとき考えればいい

羽生編集長(以下、羽生) これまでこの連載で出産や家族、キャリアについてたっぷりと語ってきましたが、今回が最終回となりました。最終回はぜひ未映子さんの今後の野望について聞きたいです。人生100年時代になったと言われていますが、これから60年、どう生きますか。

川上未映子さん(以下、川上) 人生100年時代と言われてもなんだか実感がわかないですよね。10年先に生きているかも分からない。100年生きたら100年生きたときに考えようという感じかもしれません。

羽生 以前、「年齢は無効」って言っていましたよね。よく覚えています。どういう意味でしょうか?

川上 「私にとって年齢は無効」と言いましたね。何歳までに何をしてなければいけないというのは考えたことがないんです。

「100年生きたら100年生きたときに考える」と話す川上未映子さん
「100年生きたら100年生きたときに考える」と話す川上未映子さん

羽生 「今、この時しかない」ということですよね。未来のために今を生きているわけじゃない。先を読んで、「そのときのために今準備しておかなきゃ」という発想は、私もつくづくない。「だったらいつ生きるんだ?」と思う。特に子どもの未来を心配しすぎて、墓場からドミノがこちらに向かって倒れてくるような育て方はしたくないなぁ。