出産にインスタ映えは不要

羽生 「いつ産む?なんて考える前にする事はある」の対談にも出てきましたが、「いつ産めばいい?」と逆算して安全そうな道を探る前に、自分は何をしたいのかを考えるべきということですね。

川上 何歳で子ども産んだらいいのかな?と思う前に、「私にとって子どもって何なんだろう?」と考えると、見えてくるものがあるかもしれない。そのためには、生きるってどういうことか、自分なりの倫理観を常に問う必要があると思うんですよね。誰かに幸せそうだと思われたいとか、こうすればこんなふうに見えるな、とか、大事なものを外部の評価に預けて何かを決めると、結局それは自分の頭で考えたことではないから、だめになりますよ。「インスタ上のあの人が幸せそうだし、子どももめちゃくちゃかわいいから私も欲しい」と思うのはいいけれど、自分が見ているのはフィクションだときちんと分かっていたほうがいい。そういうものに映らない、映さない部分こそが人生だから。そういうリテラシーを身につけることで、よりよく生きるための基盤にしてほしいです。

羽生 同感です。日経doorsのキャッチコピーに、「SNSの四角い窓からホントの私ははみだしてる」という言葉を付けました。自分にとっての生きる価値観を持つことは重要です。そんな倫理観やリテラシーを身につけるにはどうすればいいと思いますか?

川上 そのためにはたくさん本を読むこと。ちゃんと文学を読むこと。効率とか要約からこぼれるディティールにたくさん触れること。人のダメなところも良いところも書いてあるものを読んで、相対化できる力を持つこと。そこができて初めて、結婚や出産とかと自分が向き合うときに立ち上がるソフトができあがる、OSが鍛えられます。それがあれば、いろんなことを乗り越える力になるし、それは死ぬまで必要なものです。人生に上がりなんてないのだから。

「たくさん本を読むことで、結婚や出産に自分が向き合うときに立ち上がるソフトができあがる」
「たくさん本を読むことで、結婚や出産に自分が向き合うときに立ち上がるソフトができあがる」