年を重ねると「やらなくていい言い訳」を考える

 「何かを始めるには、30代の今が最後の開始時期かもしれない」と思い、体を使う「ボルダリング」「ダンス教室」、これまで縁のなかった「フラワーアレンジメント」や「十二単(ひとえ)を着る」など、さまざまな「初体験」を経験してみました。多くの体験をして気づいたのは、本格的に自分のものにしようと思ったら、むしろ30代でのスタートは遅いということ。自分の人生の軸にしたいのなら、体力と意欲、そして謙虚さのある20歳前後で始めなければならなかったのだと痛感しました。

「ボルダリングを初体験して、『30代の体力があるうちに、面白い名作を書かないと』と思いましたね」
「ボルダリングを初体験して、『30代の体力があるうちに、面白い名作を書かないと』と思いましたね」

 20代のうちに何かを始めてみたものの、途中で「これでいいのだろうか」「続けるべきだろうか」と迷いが生じるかもしれません。でもそれに対して、「まだ自分の鍛錬が足りないのでは」といった、謙虚さで頑張り通せる部分があると思うんです。

 けれど年を重ねるごとに、皆さまざまな成功体験が増えている。そうすると、今度は「これを始めて、何か得になるのだろうか」と損得勘定で判断したり、「自分には向いていない」と損切りしてしまったりと、「やらなくていい言い訳」を考えてしまうようになる。それは年齢による部分が大きいのでは、と。

 もちろん、気分転換や自分を見つめ直す目的なら何歳で始めてもいい。そもそも、無理に新しい体験をしなくたっていいと思います。

 数々の初体験をしてみて改めて気づいたのは、それらに過度に期待しすぎないこと。意表をつくような初体験や、何か新しいことを始めてみても、結局は「自分が今持っているものを見つめ直し、考えを深めて前に進んでいく姿勢のほうが大事」だと気づきました。無理に新しい体験をしなくても、代わり映えのない日常を送っていたとしても十分だと思います。

著書の中では、多種多様な「初体験」を経験。羽田さんが「やってみたい」とリクエストしたものが多いそう
著書の中では、多種多様な「初体験」を経験。羽田さんが「やってみたい」とリクエストしたものが多いそう
著書の中では、多種多様な「初体験」を経験。羽田さんが「やってみたい」とリクエストしたものが多いそう

 後編では、羽田さんが「手放したこと」や、「これからやってみたいこと」などを聞きました。引き続き【後編】「羽田圭介 数々の初体験『始めたことに意味がある』」もお読みください。

取材・文/尾崎悠子(日経xwoman編集部)写真/稲垣純也 イメージ写真/PIXTA

後編「羽田圭介 数々の初体験『始めたことに意味がある』」では、次のストーリーを展開

■迷いながらも続けている「瞑想」
■「始める」ではなく「手放した」こと
■長続きしなくても、意味はある