前編では、30代女性の「これといった趣味がない」という悩みについて、小説家の羽田圭介さんに回答いただきました。後編では、羽田さんが「手放したこと」や、「これからやってみたいこと」などを聞きました。

【前編】羽田圭介 新しいことを始めなくても人生は素晴らしい
【後編】羽田圭介 数々の初体験「始めたことに意味がある」←今ココ

羽田圭介さん
1985年、東京都生まれ。高校在学中の17歳のときに「黒冷水」で第40回文藝賞を受賞し、小説家デビュー。2015年、「スクラップ・アンド・ビルド」で第153回芥川賞を受賞。近著に『Phantom』(文藝春秋)、『滅私』(新潮社)、『三十代の初体験』(主婦と生活社)などがある


迷いながらも続けている「瞑想」

 小説家は家の中での仕事が多く、運動不足になりがち。僕は短時間で運動不足を解消したいので、普段は筋トレをしています。

 男性のなかには、見栄えのために上半身だけを熱心に鍛えている人もいますが、僕がトレーニングをするのは下半身中心。ポートレート写真には写らないことの多い部分ですが、体の筋肉は7割が下半身にあるといわれていますし、実用性のほうが格好いいじゃないですか。だからこそ、大胸筋だけ鍛え脚がカモシカみたいに細い人を横目に見ながら、せっせとバーベルスクワットなどで鍛えている(笑)。

 「体力や脳を使い、何かを習得するには、30代が最後のスタート年齢になるかもしれない」と、31歳から数多くの「初体験」を経験しましたが、今でも続いているのは「瞑想(めいそう)」

「今でも続いているのは瞑想」
「今でも続いているのは瞑想」

 夕方、集中力がなくなってきたなと感じると、光や音を遮断して、アラームなどもかけずに自分がよいと思うところまで、呼吸に意識するようにしています。瞑想が自分に合っているのかは分かりませんが、2日に1回くらいのペースでやっています。

 それでもまだ瞑想する前後に、「こんなことしていてもいいのかな?」と、迷うことはあります。

 だって、小説家が悩みや雑念を無くしてしまったら、書くことがなくなってしまうんじゃないかと思って。「それもまたいいか」なんて達観してしまったら、物書きとしてはどうなんだろう、と(笑)。今後も迷いながら、やったり、やらなかったりで続けていこうかなと思っています。