いつも明るく元気で、自由な発想の料理を楽しませてくれる料理愛好家・平野レミさん。エッセー『おいしい子育て』では、家事や育児、仕事に追われる日々の中でも「料理は大切」とつづるレミさんに話を聞きました。

【前編】平野レミ 幸せとは「すぐ近くに転がっているもの」 ←今ココ
【後編】平野レミ 私は私 誰かに好かれるための努力なんて不要

平野レミさん
料理愛好家、シャンソン歌手。主婦として料理を作り続けた経験を生かし、NHK「平野レミの早わざレシピ」など、テレビや雑誌を通じて数々のアイデア料理を発信している


一から作る料理 充実と、達成感

 読者の方の中には、料理に苦手意識を持つ人がいるかもしれないですね。でも、何も難しい料理を作らなくてもいいの。いり卵で十分よ。今は、ご飯も電子レンジでチンするだけのものもおいしいけれど、自分で炊いたご飯はもっとおいしいのよね。お茶だってそう。ペットボトルのお茶は手軽だけれど、自分で入れたお茶はすごくおいしいのよね。みんな仕事で頭ばかり使っているけれど、もっと手を動かさなきゃ。もったいないわよね。

 「今日食べたものは、3カ月後には自分の血となり、肉となる」と、お医者さんから聞いたことがあるの。それからは、ますます食事の大切さを感じているし、ないがしろにするのは怖いことだと思う。適当なものでおなかを満たすのではなく、自分が何を食べるか、何を口にするかを考えたほうがいいわよね。

 今は、冷凍食品も種類が豊富だし、食事のデリバリーも当たり前の時代になったけれど。しかもおいしくできているじゃない? でも、私はちょっと後ろめたい気持ちになってしまい、苦手なの。やっぱり、自分の目で見て素材を選び、一から料理を作ったほうが充実しているし、なにより生活していると感じられるのよね。それを家族に食べてもらえれば、達成感があるじゃない。

「自分の目で見て素材を選び、一から料理を作ったほうが充実している、生活していると感じるんです」
「自分の目で見て素材を選び、一から料理を作ったほうが充実している、生活していると感じるんです」

 昔、外出していた息子が、夜中の12時ごろに「お母さん、おなかがすいているのだけれど、何か食べるものはある?」と電話をかけてきたことがあったの。私はそのとき寝ていてパジャマを着ていたんだけれど、すぐに着替えて、コンビニエンスストアでおでんを買ってきて。卵とか、大根とか、やわらかくなっているでしょう。そのまま出すのではなく、素材は使わせてもらって、私の特製「レミだれ※」に入れ替えて食べさせたの。

 例えば、いただきもののレトルト食品のカレーがあるとしたら、スパイスや野菜をたっぷり加えて、「私の味」にしちゃうのね。そのままだと「私の味」じゃないから、納得いかないのよね。困っちゃうんだけれど(笑)。

※レミだれとは、醤油ベースにみりん、干しシイタケ、昆布などを加えただし醤油のこと