「親友」だと思っていたのは私だけだったのか

 てっきり、返ってくる言葉は「ありがとう」だと思っていた。けれど朋子さんはこう言った。「こんなのくれて、私のことかわいそうなやつだとでも思ってるの?」

 びっくりした。そして彼女は普段飲まないような強いお酒をオーダーしている。完全に、悪酔いしていた。「私がどれだけつらいかなんて、由美ちゃんは分からないよね。こんなもので、なんとかなるとでも思った?」

 青山さんはそのときを振り返り、こう話す。「正直、その後どう彼女と会話して、どうやって家まで帰ったか覚えていないんです」。伝票をつかんで会計をし、店を出て山手線に飛び乗ったところまでは覚えている。終電だった。朋子さんは横浜に住んでいた。車内で「どうやって帰るんだろう」と思った記憶がある。けれど、その後の記憶がぽっかりと抜け落ちているのだ。

 翌日になっても、1週間たっても、朋子さんから連絡は来なかった。自分から連絡するのも癪(しゃく)だった。1カ月が過ぎた頃、青山さんは携帯電話から朋子さんの連絡先を消した。

 「あんなに仲が良くて、なんでも話せていたのに。でも、『親友』だと思っていたのは、私だけだったのかも」

 あれから8年。青山さんは今でもふと、朋子さんを思い出すという。「かつて『親友』だと思っていた人との縁を切るなんて、自分は性格が悪いなと思います。でも、あの時の私はそうするしかできなかった」。あの時の選択は正しかったのか、間違っていたのか。何を言えば、どうすれば良かったのだろうか。

西村宏堂さんに聞いてみた

 そこで今回は、僧侶で、メイクアップアーティストであり、LGBTQの当事者である西村宏堂さんに話を聞いた。

西村宏堂さん
西村宏堂さん
1989 年、東京生まれ。浄土宗僧侶。ニューヨークのパーソンズ美術大学卒業後、米国を拠点にメイクアップアーティストとして活動。

 たとえ友達だったとしても、「一緒にいて自分がハッピーになれない人」とは離れてもいい、と西村さん。