物事をゼロか100かで考えないで

 「やりたいことがあるけれど、親があまり好ましく思っていないから、あと一歩が踏み出せない」――。相談者の女性は大人なのだから、本来ならば自分の気持ちを優先していいはず。

 それが、「お父さんにも、きちんと納得してもらいたいから」と二の足を踏んでいる状況は、どこかで「うまくいかなかったらどうしよう」「何か起きてしまったとき、一人で解決できるだろうか」「うまくいかなかったら、年齢的に取り返しがつかなくなるのではないか」などと、失敗を必要以上に恐れているのだと思います。そして、そういった人たちは「やるからには、必ず成功させなくては」「失敗してはいけない」と、ゼロか100かで物事を考えがちです。

「やりたいことがあるのに二の足を踏んでしまうのは、失敗を必要以上に恐れているのかもしれません」(石原さん)
「やりたいことがあるのに二の足を踏んでしまうのは、失敗を必要以上に恐れているのかもしれません」(石原さん)

 スポーツでも勉強でも、技術や知識を習得するには1日では身に付きませんよね。それと同じです。少しずつ目標に向かって、一歩ずつ進んでいく。ゼロか100かで物事を考えてしまう人たちの頭の中は、「少しずつ進んでいく」という考えが弱いのかもしれません。何かに挑戦すると、「目標に早く到達する」「すぐに成功する」と思い、それがかなわないと「周囲に認めてもらえない」という意識を持ってしまっているんですね。

 目標を達成できる人は、まずはコツコツと小さなところから取り組んでいます。小さなことであれば、何か問題が起きたときも、やり方を変えてみたり、時にはやめたりすることもできる。何も、最初から成功しなくてもいいんです。融通を利かせ、軌道修正をしながら、最終ゴールに到達すればいいんですよ。

 コロナ禍で、海外に行くことは容易ではありませんが、まずはブログやSNSで発信してみたり、いきなり移住するのではなく短期滞在を経験してみたり、そこから徐々に長期滞在をして、暮らすように過ごしてみたりしてはどうでしょう。

 相談者さんは、頑張り屋さんがゆえに完璧主義なところがあるようですから、「目指していた目標に到達できるかどうか」を求めようとせず、まずは「一つひとつのプロセスを大事にする」ことに取り組んでみてください。

 そして、そのプロセスがうまくいったという成功体験を積んでいくといいですね。ゼロか100かで考えなくてもいいんです。その中で1つでもできて、「目標に一歩近づけてよかった」といった視点で物事を見られるようになってほしいと思います。