もっと「自分中心」になっていい

 そして、何より大切なのは「自分の気持ち」を優先できるかどうか。自分にはやりたいことがあるのに、親から反対されたり、「やってもいいよ」と言われないと動けなかったり。本来なら、周りが反対しても「私は挑戦したい」と自分の意志を貫き、自分の選んだ道を進むことに罪悪感を抱かなくてもいいんです。

 例えば、結婚でもよくある事例です。親が結婚相手を納得してくれず、反対されて結婚を諦めた場合は、その気持ちをずっと引きずることになります。すると、次に何かやりたいことがあっても「どうせまた反対されるから」と、思い込み、動けなくなってしまう。ネガティブな感情を引きずると、ますます挑戦することに恐れを抱き、自信がなくなっていきます。その感情が収まるには、結構な時間を要する場合もあります。

 相談者さんは、自分自身に意識が向いていない状態。意識は他者(お父さん)に向いていますよね。今必要なのは、「自分の意志を優先してもいい」と気づくこと。もっと「自分中心」になりましょう。

 「自分中心」と「自己中心」は、別のものです。「自分中心」は、自分の気持ちや意志を大切にできること。他人の言動に振り回されず、自分の意志を相手に伝えることができ、自分自身を認めて受け入れられる人です。要するに、自分を大事にするということです。

 一方、「自己中心」とは、自分さえよければそれでいいといった傍若無人な振る舞いをすること。相談者さんに足りないのは、「自分中心」の考え方です。

 とはいえ、それを理解して実行に移すのは、なかなか難しいかもしれない。けれど、それは人として当たり前のこと。「自分の将来は、自分で決める自由がある」「自分の気持ちを大事にしてもいい」と、まずは知識として頭の片隅に入れておくだけでも十分です。

 今は、お父さんから反対され、「自分の気持ちを優先する」ことができないでいるけれど、だからこそ、「自分の意志を大事にしてもいいんだ」と強く思うようにしてください。まずはその意識を身に付けて、育てていくところから始めてみてほしいなと思います。


 後編では、やりたいことに反対をする親との付き合い方や、親と上手なコミュニケーションの取り方などについて話を聞きました。引き続き【後編】「親子であっても他人さま 感謝の気持ち持てば自立できる」もお読みください。

取材・文/尾崎悠子(日経xwoman doors)イメージ写真/PIXTA

後編「親子であっても他人さま 感謝の気持ち持てば自立できる」では、次のストーリーを展開

■親子でも「話し合いの場」は重要
■「人とのつながり」を安心材料に
■実は親の方が子どもに依存している
■親子であっても「他人さま」