如来寺住職の釈徹宗さんと漫画家の細川貂々さんが、これまでの人生で編み出してきた「心の荷物を降ろす方法」を語り合う書籍『生きベタさん』(講談社)。前編では二人が抱えていた生きづらさと、対処法を伺いました。後編では、結婚や出産といったプライベートや、転職や昇進など仕事での変化でつい周りと比べてしまうといった悩みについて、さまざまなアドバイスをもらいました。

【前編】漫画家細川貂々×如来寺釈徹宗 生きづらさの乗り越え方
【後編】漫画家細川貂々×如来寺釈徹宗 他人と比べなくなる方法 ←今回はここ

左:釈徹宗(しゃく・てっしゅう)さん
大阪府生まれ。浄土真宗本願寺派・如来寺住職。相愛大学学長。NPO法人リライフ代表。近著に『天才 富永仲基―独創の町人学者』(新潮新書)『歎異抄 救いのことば』(文春新書)など。

右:細川貂々(ほそかわ・てんてん)さん
埼玉県生まれ。漫画家・イラストレーター。コミックエッセー『ツレがうつになりまして。』(幻冬舎)は2009年にテレビドラマ化、2011年に映画化されるなど大ヒット。現在、兵庫県宝塚市で、生きづらさを抱えた人たちが集う「生きるのヘタ会?」を主宰。


周りと比べてしまうときは、一度点検してみる

編集部(以下、――) 年齢を経ると結婚や出産といったプライベートや、転職や昇進など仕事での変化があり、つい周りと比べてしまう――、なんて悩む声も聞きます。

釈徹宗(以下、釈) 人間は、「人が欲しがっているものを欲しくなる」傾向にありますね。持ち物にしても、学歴や勤務先のブランドにしても、「みんなが羨ましがる」から「自分も欲しい気になる」人が比較的多いのかなと感じます。

 けれど、それは「本当に自分が欲しいものなのか?」と、一度点検してみるといいですよね。他者の欲求に応えて生きていては、せっかくの自分の人生なのにもったいない。「自分が本当に求めているものは何か」を問うのは、世界では多くの宗教の修業で取り入れられています。中でも代表的なものは、「自分の死をイメージする」こと。

 もしも自分が明日死んでしまうとしたら、今日は何をするだろう。誰に会うだろう。そうやって考えていくと、誰かを羨んだり見えのためだけに何かを欲したりすることが、案外つまらなく思えるかもしれない。

―― 友人や同僚の結婚や仕事での昇進を、素直に喜べないという声も多く聞きます。

 そもそも、嫉妬の大半は身近な人に対するものではないでしょうか。縁もゆかりもない著名人には、あまり強い嫉妬心は抱かないものですよね。

 嫉妬をしているときは、自分の中に「枠組み」をつくってしまっているのでしょう。心のどこかで、相手が自分より下だと評価している、勝手な「枠組み」です。その人が活躍し始めると嫉妬したり、モヤモヤした気分になったり。まずは、自分はそうやって相手を「枠組み」で見ていることに気づくのが大事だと思いますね。

細川貂々(以下、貂々) 私は自分の周りの人ではなく、会ったこともない人に嫉妬していました。同じ漫画家の人ですが、作品は大好き。けれど、その作品が売れているとすごく羨ましい気持ちになります。

―― その気持ち、私も分かります。どう対処したらいいでしょうか。