誰も傷つけない笑い 自分だけが傷ついている

【質問】空気を読めないとダメですか?

 空気って「読むもの」だと言われているの? 俺は空気を吸わないと苦しくなるから、読まないで吸っちゃうけどなぁ。空気をどう読んだらいいかなんて、分からないもん。だから時々、余計なこと言っちゃうときもあるの。思ったらすぐ口にするから、「思っていることを、一度のどのあたりで変換してからしゃべるようにしなよ」と言われたこともあるし。

 俺なんて普段、9割方うそを言っているけれど、だんだんその9割が本当のように思えてきちゃうんだよ。自分でその気になっちゃうの。

 「誰も傷つけてない笑い」だと言ってくれる人もいるけれど、俺だけが傷ついているのよ(笑)。自分が傷つく分には自分の中で収束しちゃうから、それでいいと思ってる。

禍福は糾える縄の如し

【質問】将来の目標、ないとダメですか?

 明確な将来の目標を持っている人はいいよね。それに突き進めばいいのだから。ない人は……、仕方がないよね。

「『禍福は糾える縄の如し』。難しそうに聞こえるから気に入ってるんだよね」
「『禍福は糾える縄の如し』。難しそうに聞こえるから気に入ってるんだよね」

 でも、今の時点で目標がないということは、これから目標ができるとも考えられるでしょ? 可能性しかないじゃない。目標がある人はその道をまっすぐ進めばいいけれど、目標がないなら、どんな道にもオールマイティーに進めるよね。

 俺の目標? 俳優の反町隆史さんみたいに生きることかな(笑)。でも俺は今75歳だから、何歳で成就できるかも重要だよね。実現できそうな、小さなことから始めてみるのもいいんじゃないかなぁ。

 生き方には、正解がないのよ。俺なんて、どちらかというと不正解で生きてきた人間。でも、人生はいいことばかりじゃないし、悪いことばかりでもない。「禍福(かふく)は糾(あざな)える縄の如し」って言ってね、幸福と不幸は縄のように交互にやってくるという意味なんだけれど、人生に必要なのはバランスだよね。

 目標を持つことももちろん大事だけれど、楽しく笑って過ごして生きていければ、それでいいんじゃないかなあ、と俺は思うよ。

読むと、悩んでいることがちっぽけに思えるような、高田さんの人生観が詰まった一冊。
読むと、悩んでいることがちっぽけに思えるような、高田さんの人生観が詰まった一冊。

 後編では、高田さんの20代を振り返るほか、ハッピーかつご機嫌でいる方法を聞きました。引き続き後編「高田純次 叱って伸びるはウソ 他人と自分もっと褒めて」もお楽しみください。

取材・文/尾崎悠子(日経xwoman doors)写真/稲垣純也 スタイリング&ヘアメイク/鍋田由美

下編「高田純次 叱って伸びるはウソ 他人と自分もっと褒めて」では、次のストーリーを展開

■大学受験に失敗「普通ではやっていけないのかも」
■二十歳で「自分探し」の旅へ そこで得たものとは
■健康ならちょっとのアンハッピーは受け入れられる
■自分をご機嫌にするには?