人の数だけ悩みもある。どんなに年を重ねても、悩みの種は尽きません。あなたの悩みに寄り添う連載、今回は30代女性からの「若手社員との会話が続かない」というお悩みです。今回は、若手育成のプロであり、ウィズグループ代表の奥田浩美さんに回答していただきました。

【前編】若手社員と会話のラリーが続かない 39歳管理職の悩み ←今ココ
【後編】奥田浩美 会話の鍵は「Good & New Rule」

若手社員と会話のラリーが続かない

 「若手社員と、会話のラリーが続かないんですよね」。そう話すのは、関東近郊で臨床検査技師として働く安田美由紀さん(39歳、仮名)。

 安田さんは医科大学を卒業後、都内のクリニックで勤務していたが、32歳で結婚したのを機に退職。しばらくのんびりして、またすぐに復職しようかと考えていたものの、自宅でゆっくり過ごす生活も特に不満がなく、気づけば30代も終わりにさしかかっていた。

 そんな安田さんに、クリニックを経営している知人から「一緒に働かないか」と声がかかった。昨年から続くコロナ禍で、「PCR検査ができる人材」を探していたという。知人からの連絡自体が久しぶりだったこともあり、当初は驚いたものの「このコロナ禍で誰かの役に立てるなら」と引き受けた。

 新しく勤務するクリニックでは、年齢やこれまでの経験などを考慮して、管理者として働くことになった。約7年振りの職場復帰だ。朝夕の電車通勤も、職場で食べるランチも、夫以外の人との会話も久しぶり。安田さんは緊張よりも、また社会とつながれることに、どこかワクワクしていた。

 職場には、検査技師がもう1人いる。25歳の美咲さん(仮名)だ。以前勤務していた病院は1年ほどで退職。このクリニックは2社目だという。てきぱきとしていて無駄な動きがなく、こちらから指示を出さなくても、先回りして仕事の準備ができる。「今まで数多くの検査技師たちと働きましたが、これほど要領がいい人はなかなかいませんでしたね。とても能力が高い人だなと思いました」

 検査室では一日中、二人っきりだ。途中、来客や昼食時、トイレに行くときなど検査室から出て外部の人と会話することもあるけれど、基本的には朝から退勤まで同じ時間を過ごす。

 安田さんは根っから明るく、おしゃべり好きな性格。どちらかと言えば人見知りだった美咲さんとも早く打ち解けたいと、さまざまな話題を彼女に話しかけてきた。駅前においしそうなパン屋さんがオープンしたこと、最近はやっているというスイーツ……。美咲さんがとあるゲームが好きだと知り、そのゲームに詳しい夫に教えてもらったこともある。

 けれど、会話のラリーが続かないのだ。もちろん、美咲さんは安田さんの会話を無視しているわけではない。「おいしそうなパン屋さんがオープンしたよ」と安田さんが言えば、彼女はすぐさま「このお店ですか?」とスマホで調べてくれる。「おいしそうですね! 今度買ってみます」。話が終わってしまった。ゲームの話は盛り上がったものの、他のゲームの話をされてしまうと、こちらが予習不足のために話が続かない。あるときは、美咲さんが「行ったことありますか?」と、都内にある話題スポットの話を振ってくれたのに、安田さんはそこを知らず、「盛り下げてしまった」と悔やむ。

 どうしたらいいのか。そこで安田さんは、退勤後に「食事に行こう」と誘ってみた。そう、「飲みニュケーション」(職場の同僚や上司・部下などとお酒を飲みながらコミュニケーションを取ること)である。コロナ禍でアルコール類を提供しておらず、ノンアルコールでの「飲みニュケーション」となったが、そこで安田さんは思わず面食らうことになる。