「自分の道をいかに楽しく走るか」にフォーカスする

 周囲の「仕事で昇進しました」「結婚しました」という声に対し、自分が周りより後れを取っているのではないかと不安に思う気持ち、よく分かります。

 例えば長距離を走るとき、スタート地点ではあまりまだ差がついていませんよね。一歩先を走る人に「追いつかなきゃ」と思う気持ちもあるけれど、人生という長距離走では、前を走る人に追いつく必要はないと私は思っていて。

 同じ道を走っていたとしても、どこかで道が分かれることもあるし、そもそも、人はそれぞれ進む道が違う。周りの速度に追いつこうとするのもいいけれど、周りを見過ぎて自分のペースを乱さないでほしいなと思います。

 みんな、スタート地点も違えば、ゴールも違う。それと同じように、結婚して家庭に入る人もいれば、仕事を突き詰める人も、どちらも手にする人もいる。自分は人生というレースをどう走り切るか。他人のペースを見るのではなく、「自分の道をいかに楽しく走るか」だけにフォーカスするようにしたいですね。

「みんな、スタート地点も違えば、ゴールも違う。『自分の道をいかに楽しく走るか』だけにフォーカスするようにしたいですね」
「みんな、スタート地点も違えば、ゴールも違う。『自分の道をいかに楽しく走るか』だけにフォーカスするようにしたいですね」

 そうは言っても、なかなか難しいもの。そんなときは、1日、1週間、1カ月といった短めの単位で、自分の頑張りを振り返ってあげるといいと思います。仕事だけではなく、プライベートや自分磨き、趣味でも何でも。「頑張ったよね」と、自分に対して評価をしてあげる習慣をつけていくことで、少しずつ自分に自信が付き、周りと比較する感情が薄れてくるはずです。

 今回の相談者、彩夏さんも休職されていましたが、私も乃木坂46にいたとき、お休みをしていた期間がありました。doorsの読者の方の中にも、今休職していたり、周囲に休職中の人がいたりすることもあるでしょう。

 つい私たちは、お休みする人に対して「ゆっくり休んでいいんだよ」と言ってしまいがちです。それも決して間違いではありません。けれど、「何も気にしないでゆっくり休んで」なんて言われると、「居場所がなくなるのではないか」「必要とされてないのかな」「これまであんなに頑張ってきたのに」と思ってしまう人も。私はそうでした。

 休職を余儀なくされる人は、きっと頑張り屋さん。それまでずっと、走り続けて仕事をしてきたのだと思います。それゆえ、体調を崩したり、気持ちが疲れてしまったり。そして頑張り屋さんだからこそ、「自分だけ一時停止をしていることが申し訳ない」「周りから後れを取ってしまう」と思うはず。

 けれど、今後キャリアを長く重ねていきたいのならば、なによりも「しっかり休めるときは休む」。そして、周囲の人たちは「戻ってきてくれたときに、また一緒に仕事ができるのを楽しみにしているからね」と言ってあげるといいのではないでしょうか。「今のあなたには休むことも大事な仕事なのだから」と言ってくれたら、罪悪感を抱かず休むことができるのでは、と思います。

この日、上から見るとクラクラしそうなほどの大きならせん階段での撮影に、嫌な顔一つせず階段を上り下りしてくれた中元さん。終始にこにこと取材に応じていただき、えくぼのできる笑顔にとても癒やされました(編集部)
この日、上から見るとクラクラしそうなほどの大きならせん階段での撮影に、嫌な顔一つせず階段を上り下りしてくれた中元さん。終始にこにこと取材に応じていただき、えくぼのできる笑顔にとても癒やされました(編集部)

体が出すサインを、スルーせずに受け止めて

 以前と比べて眠りが浅いと感じたり、いつまでも眠りにつけなかったり、日中頭が回ってない気がしたり。そういった体のサインを、スルーせずに受け止めてあげてほしい。そして何が原因なのか、考えてあげてください。眠れないのは大事な仕事を抱えているための一時的なものなのか、その仕事が終わってもまだ眠れないのか。季節的なものなのか。そういった体の声を、きちんとキャッチしてあげてほしいなと思います。

 私は、長い間抱えていた不眠や体の不調に、ずっと気づかないふりをしてきました。それが休業につながってしまった理由の一つだと思っています。「仕事が大事」だと思う人こそ、まず健康を最優先してください。なによりもまず、自分が自分を十分にいたわってあげてくださいね。

取材・文/尾崎悠子(日経xwoman doors)写真/稲垣純也 イメージ写真/PIXTA

下編「乃木坂中元日芽香 過食症、適応障害経てカウンセラーに」では、次のストーリーを展開

■安全で堅実な人生を送りたかった
■アイドルなのに「自己アピールの仕方が分からない」
■「選抜」「アンダー」見えない大きな壁
■ストレスを抱え、たどり着いた発散法
■今の私のきっかけになった、ある出会い
■心理カウンセラーとして、これから