青木さやか 母との長い確執を経て思うこと

 両親はそろって教師だったという青木さん。幼い頃は尊敬していた母を嫌悪し始めるきっかけは、両親の離婚だった。その後20年以上も続いた確執は、母が病に伏したときに青木さんが取った行動で、徐々に解消し始める。あれだけ嫌っていた母を、今では「大好きになった」と言う青木さんに、この悩みについてどう思うか聞いてみた。

「大嫌いだった母を、今は大好きになりました」(青木さん)
「大嫌いだった母を、今は大好きになりました」(青木さん)

母は、あなたが憎いのではない

 親の言う通りにしてみたらいい、と思います。私は、否定して良かったことは一つもなかったですから。否定すればするほど自分が苦しくなりました。相手を変えるより、自分の意見を変えるほうが早い、というのが私の持論。親との関係性だけじゃなくて、仕事でもパートナーとでもそう。相手の意見をまず聞かないと、自分の意見なんて通らないじゃないですか。

 北風と太陽みたいに、北風をぴゅうぴゅう吹かせても、太陽のほうが早かった……なんて経験があるので、今の私ならそうしますね。

 でもそれは難しい、彼と本当に結婚したいのであれば、お母さんがなぜ反対しているのかを、もっと聞いてみたらいい。あなたを苦しめたくて言っているのではないはずです。話せば解決して、彼と結婚できることになるかもしれない。

 結婚相手を認めてくれないのも、『何らかの理由』があるから言っているわけですよね。娘が見ている現実と、親が見ている現実は違うもの。やみくもにダメ出しをしているわけでも、あなたが憎くて言っているわけでもないはずです。だって本当に娘が憎かったら、何百万もする大学の費用なんて出さないんじゃないかな。

 心の中に母親に対して何かしらの感情が残っているなら、物理的に距離をおいても、縁を切っても、それでは解決しないと思います。みんな、どうしたら解決に向かうか分かっているはず。ただやらないだけ。だって、ものすごく疲れる作業ですもん。

 私は母との問題を、『人生最後の一番大きな仕事』だと思って取り組みました。よく、『仕事が忙しいから』と言って後回しにしようとする人もいるけれど、仕事と親とどちらが大切かといえば、絶対に親とのこと。私は1年仕事を休んででも、取り組んだかもしれないですね。

 後半では青木さんがどのように実母との確執を乗り越えたのか、具体的に伺います。【後半】青木さやか 母との確執乗り越えた今だからできる親孝行へ続く

取材・文/尾崎悠子(日経doors編集部) 写真/稲垣純也