人の数だけ悩みもある。どんなに年を重ねても、悩みの種は尽きません。あなたの悩みに寄り添う連載、今回は「夢を追いかけるか、安定を取るか」というお悩みです。お笑いコンビ納言の薄幸さんに回答していただきました。

【前編】納言薄幸 幼少期からの夢に挫折し見つけた芸人への道 ←今ココ
【後編】納言薄幸 「芸人やめようか」執着手放し夢がかなった

夢を追うか、安定を選ぶか

 「小さい頃から、洋菓子が好きでした」と話す、しおりさん(仮名、28歳)。真っ白い生クリームに、真っ赤ないちごがのったショートケーキ。色とりどりのフルーツが並べられたタルトや、シンプルだけれどいくつでも食べられそうなシュークリーム。食べるだけではなく、つくることも好きだった。

 小学校のとき、洋菓子について詳しく書かれた分厚い本を買ってもらい、ボロボロになるまで読み込んだ。どの国で生まれたお菓子なのか。なぜこの名前が付いたのか。知れば知るほどハマっていった。休日になるとスーパーマーケットへ行く母に付いていき、ケーキの材料を買い物かごに入れた。

 「大人になった今、バターの値段の高さを見て買うのをためらうこともあります(笑)。バターを大量に使うクッキーやパウンドケーキづくりにハマったときは、平気でいくつも買い物かごに入れていました。失敗したことも数知れず。けれど母は一度も怒らず、自由につくらせてくれましたね」

「小さい頃の夢はケーキ屋さんで働くこと。ケーキが焼き上がったときの匂いがたまらなく好きでした」
「小さい頃の夢はケーキ屋さんで働くこと。ケーキが焼き上がったときの匂いがたまらなく好きでした」

 その後、ケーキ職人になりたいと思ったしおりさんだが、大学進学を願う父親の反対に遭う。昔から父親は厳しく、長女であるしおりさんは反抗することもできなかった。

 「勉強は得意ではありませんでしたから、偏差値の高い大学へは進学できませんでした。それでも、父の願いをかなえられた、役目は果たしたとホッとしたのを覚えています。その後就職して今に至るわけですが、やはりケーキをつくる仕事に就きたいという思いが、年々強まるんです」

 しおりさんは今、洋菓子の専門学校へ通おうかと考えている。フランスにも洋菓子づくりを習いに行ってみたい。そのためにコツコツ貯金もしてきた。

 「でも……。正直、今の安定した生活を捨て、全く新しい世界に飛び込むのを躊躇(ちゅうちょ)してしまうんです。諦めるべきか。思い切って飛び込むか。決めかねています」

納言の薄幸さんに聞いてみた

 そこで今回は、お笑いコンビ納言の薄幸さんに話を聞いた。

薄幸(すすき・みゆき)さん
1993年、千葉県生まれ。小学5年生から子役養成事務所に入るも、16歳で俳優の夢を断念。17歳で芸人を目指し、2017年に相方の安部紀克さんとお笑いコンビ「納言」を結成。著書に『今宵も、夢追い酒場にて』(幻冬舎)